面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれて困ったことはありませんか?何を聞けばいいのか迷ってしまったり、その場で何も浮かばなかったりと、この「逆質問」に苦手意識を持つ方もいらっしゃると思います。この記事では、逆質問の重要性や事前準備のコツなどを詳しく解説します。後悔のない転職を実現するために、苦手意識を払拭しつつ、逆質問を有効に活用しましょう。

目次

1. 逆質問で何も聞かないのはNG?企業の本音

転職面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれると、多くの方が戸惑いを感じるものです。では、企業は実際のところ、この逆質問の時間で何を見ているのでしょうか?

実は、多くの企業は逆質問を通じて「特定の何か」を見極めようとしているわけではありません。純粋に、応募者に何か不安や疑問があれば解消したい、お互いが理解を深め合いたいと思い、質問を求めています。しかし、このオープンクエスチョンへの反応は、応募者の人となりがよく現れる機会となり、結果的にその際の反応が選考に影響することもあります。そのため、応募者としては、この「逆質問」に真摯に向き合いたいところです。

また、質問をする姿勢や態度そのものが、面接にしっかりと準備をして臨んでいるかどうか、仕事に対して熱意を持っているかといった指標として見られることもあります。

2. 逆質問は後悔ない面接にするチャンス

逆質問の時間は、面接で伝えきれなかったことを補完し、求人情報だけではわからなかったことを理解する絶好の機会です。この時間を上手く活用することで、後悔のない転職を実現するチャンスとなります。

2.1 聞きたいことを聞くために

いざ面接で質問する場面になると、「これを聞いていいのかな」と躊躇してしまうこともあると思います。また、実際に質問をしてみると、思ったような回答が得られずに戸惑ったりすることもあるかもしれません。そういった状況でも落ち着いて質疑応答が出来るように、実践的なテクニックをご紹介します。

不勉強で申し訳ないのですが…

初歩的だけど自分が理解し切れていないこと、理解はできているつもりだけど自信がないことを質問したい時、「これくらい自分で調べろ」と思われないか不安を感じ、質問をためらってしまうこともあると思います。しかし、理解がずれたまま話を進めると、その後のコミュニケーションが噛み合わず、相手から「知ったかぶりをしている」と悪印象で見られる可能性があります。自分の知識や理解度に自信がない場合は、枕詞として「不勉強で申し訳ないのですが…」という前置きを使ってみましょう。自身の気持ちを落ち着かせた上で質問が出来るほか、相手に対して謙虚さと学ぶ姿勢を示すことができます。

質問の意図を伝える

たとえば予め準備していた質問をする際に、もしかしたらその前の文脈とは違う質問をしてしまい、面接官にとって唐突な印象を与えてしまうこともあるかもしれません。また、質問に対して思ったような回答が得られない場合は質問の意図が相手に伝わっていない可能性もあります。そんな時は、その質問をする理由や背景を簡潔に説明してみましょう。面接官の理解を促し、より的確な回答を引き出せるかもしれません。

たとえば:

「御社の新規事業について詳しくお聞かせいただけますか?実は、私が以前携わっていた分野と関連があると考えていまして、その事業に着手した背景に興味があるとともに、私の経験が活かせる部分もあると感じています。」

このように質問の背景を説明することで、あなたの経験や関心事を伝えつつ、具体的な情報を得ることができます。

2.2 質問が浮かばない場合は

質問が出てこない、思い浮かばないこともあるかもしれませんが、逆質問の場は、必ずしも質問に使わなくても構いません。
たとえば、面接の中で、用意していたけど伝えきれなかったことがあれば、「面接の中でお伝えが出来なかったのですが…」と前置きをして、それを改めて伝える場として活用しても構いません。また、「質問というよりは、感想になってしまうのですが…」と前置きをした上で、面接を通じて感じたこと、共感したことや自分の経歴との共通項などを伝えるのも、有効なアプローチです。感想を伝えることで、面接の内容に対する関心度や理解度を示すことが出来るほか、感想という形で自分の想いや熱意を表現することも可能です。

実際の面接の場面になると、緊張して上手く自分を表現できないことがあると思いますが、ぜひ逆質問をチャンスと捉え、前向きに面接に取り組んでみましょう。そして、面接の場をより有意義なものにするためには、事前の企業理解など、準備が必要不可欠です。次のセクションでは、面接、逆質問に向けた事前準備について解説します。

3. 仮説思考を活用した質問の準備

応募した企業に興味を持っているつもりでも、逆質問の場で上手く質問が浮かばないと「自分はこの企業に興味がないのかも…」と自分自身の気持ちに不安を感じてしまうこともあるかと思います。しかし、質問が浮かばないのは、その企業に興味がないのではなく、もしかしたら、興味を上手く表現する方法を知らないだけなのかもしれません。ここでは「仮説思考」を活用した質問の考え方について説明します。

3.1 仮説思考とは何か?

仮説思考とは、得た情報に対して「なぜそうなのか?」「どうしてそうなったのか?」と疑問を持ち、背景や理由を自分なりに考え、仮の答え(仮説)を導き出すプロセスです。この思考法を癖づけていくと、色んなことに対して想像力が働き、深い理解と興味が持てるようになります。

そして、この思考法で企業情報を見ていくと「なぜこのビジネスを展開しているのか?」「なぜこういったビジョンを掲げているのか?」「なぜこういった働き方を取り入れているのか?」といったように考える中で、表面的な情報だけではなく、その背景にある事業戦略など、企業の根幹部分にまで思考が巡るようになります。また、「なぜ?」を追求していくと、企業ホームページだけではなく、社長の経歴や業界動向などの周辺情報にも興味が広がるようになり、結果的に情報収集力が高まり、企業を深く理解できるようになります。企業理解を深めた上で行う質問は面接官としても好印象を抱きますし、話も弾みやすく、より有益な情報が得られる可能性があります。

3.2 情報収集から仮説を立てるプロセス

「なぜ?」という疑問をもつことで「もしかして…」という仮説も生じやすくなります。
たとえば、「なぜこのようなビジネスを展開しているのか?」と考える中で、企業理念や沿革を見ると「もしかして、こういった設立背景があって、こういう想いを大事にしてきたからこそ、このビジネスを展開しているのか」といったように、点と点で見えていた情報が、線で結びつく瞬間が増えていくはずです。仮説の段階ではそれが事実と違っていても問題ありません。大切なのは自分の言葉で話せるくらいに、企業についての認識・見解を自分の中に作っていくこと。その仮説の積み上げが、質問を考える上での土台になります。

3.3 仮説を質問に変える

面接を、自分が立てた仮説を検証する場として捉えてみることで、質問したいことも見えてくると思います。たとえば、情報を集める中で「なぜ?」の答えが見えなかったことや、仮説を立てたけど確証がつかめなかったことなどは、そのまま質問に変えることが出来るはずです。ここで大切なのは、自分の立てた仮説に捉われ過ぎず、柔軟に考えを改めていくこと。質問した結果、自分の立てた仮説が間違っていても、それは正しい情報を習得し新たな気付きを得られるチャンスです。また、仮説が正しかった場合は、さらに一歩進んだ質問を投げかけることもできるので、より深い情報を得られる可能性があります。

このように、仮説思考を持ちながら情報収集を行ったり面接に臨んだりすることで、面接における質問の場をより意義あるものに変えていくことができます。次のセクションでは、具体的にどのように仮説思考を活かして企業情報を見ていくかを解説します。

4. 仮説思考を企業研究/質問に活かす

ここでは、仮説思考を企業研究に活かす具体的なアプローチをお伝えします。どんな情報から見ていくかはその人の興味や目的によって様々ですが、ここでは求人への応募を進めている段階と仮定し、求人情報から始まり、企業情報、業界動向へと視野を広げていくアプローチでお話を進めていきます。

4.1 求人の募集背景を考えてみる

求人情報を見る際、具体的な仕事内容や条件待遇を理解することも大切ですが、ぜひ「なぜ、このポジションを募集しているのか」という募集背景についても考えてみてください。場合によっては求人情報の中に記載されていることもあるかもしれませんが、募集背景からは、その企業が現在直面している課題や将来の展望を読み取ることが出来ます。募集背景を深く考察することで、企業の目指す方向性や、あなたがどのように貢献できるかが見えてくるでしょう。

仮説を立てる際のポイント:

  • なぜ今この職種を募集しているのか?
  • この職種が担う役割は、企業にとってどのような意味を持つのか?
  • 求められるスキルや経験から、どのような課題解決を期待されているのか?

仮説の例: デジタルマーケティング担当者の募集の場合:

  • 仮説1:オンライン販売の強化を図っているのではないか?
  • 仮説2:新規顧客獲得のためのデジタル戦略を立てようとしているのではないか?

質問例:

  • 「デジタルマーケティング担当の募集を拝見しました。御社では今後、オンライン販売の強化を検討されているのでしょうか?」
  • 「新しいデジタル戦略について、具体的にどのような目標や期待をお持ちでしょうか?」

4.2 企業情報を抑える

募集背景を通じて「この企業が何を実現させようとしているのか?」といった方針や戦略に興味が向いたら、企業への理解もより進みやすくなると思います。次のステップとして、企業のウェブサイトや公開資料を通じて、その企業の理念、歴史、主要な事業内容、最近の取り組みなどを把握していきましょう。これらの情報から、企業の価値観や文化、将来の方向性を読み取ることができます。

仮説を立てる際のポイント:

  • 企業理念は具体的にどのように事業に反映されているか?
  • 最近の新規事業や施策は、どのような戦略に基づいているのか?
  • 企業の強みや特徴は、市場でどのように活かされているのか?

仮説の例: 「環境に配慮した製品開発に力を入れている」という情報があった場合:

  • 仮説1:SDGsへの取り組みを通じて、新たな顧客層の開拓を目指しているのではないか?
  • 仮説2:環境配慮の姿勢を示し、中長期的な企業ブランドの向上を目指しているのではないか?

質問例:

  • 「環境配慮型製品の開発に注力されていますが、これによってどのような市場や顧客層の開拓を目指されていますか?」
  • 「環境への取り組みを通じて、今後の御社として世の中にどんな影響を与えていきたいと考えていますか?」

4.3 業界動向を抑える

企業の価値観や経営方針に触れ、それを魅力的に感じたとしても、企業情報だけでは、果たしてその取り組みが特別なものなのか、他社と比較した時に違いがあるのかといった判断は難しいです。さらに次のステップとして、ニュースや専門メディア、ベンチマークしている競合の情報などに触れながら業界全体の動向を把握しましょう。より俯瞰した視点を持つことで、その企業の市場での位置づけや、直面している課題、将来の機会などをより深く理解することができます。

仮説を立てる際のポイント:

  • 業界全体のトレンドは何か?その中で当該企業はどのような立ち位置にあるのか?
  • 主要な競合他社と比較して、どのような強みや課題があるか?
  • 技術革新や規制変更など、業界に影響を与える外部要因にはどのようなものがあるか?

仮説の例: 「AI技術の進展により、業界全体が自動化に向かっている」という情報が合った場合:

  • 仮説1:当該企業もAI導入を進めており、それに伴う組織改革を行っているのではないか?
  • 仮説2:AIに頼らない、人的サービスの質の向上で差別化を図ろうとしているのではないか?

質問例:

  • 「業界全体で自動化が進んでいると思いますが、御社ではどのような技術革新や組織改革を進めていらっしゃいますか?」
  • 「業界全体が自動化に向かう中で、御社ならではの差別化戦略をお聞かせいただけますか?」

仮説思考を持ちながら事前の準備をしっかりしていれば、大きく的外れな質問や回答をしてしまう可能性も低くなりますし、企業に対する興味・関心の深さもきっと伝わります。自信を持ちつつ、ぜひ面接官との会話を積極的に楽しんでください。

5. まとめ

転職面接での逆質問は、企業とのコミュニケーションを深める貴重な機会です。この時間を通じて、お互いの理解を深め、良好な関係性を築く第一歩としましょう。適切な準備と前向きな姿勢があれば、逆質問はあなたの転職成功の鍵となるはずです。

企業との対話を楽しみ、自信を持って逆質問に臨んでください。