「市場価値を高めたい」「どこに行っても通用する人材になりたい」──そう考えて、ポータブルスキルを鍛えたいと思っている方も多いでしょう。キャリアに前向きな姿勢があるからこそ、この記事にたどり着いたのだと思います。
ただ、「ポータブルスキル」と一言でいっても内容は幅広く、漠然と「伸ばしたい」と思っていても、具体的にどんな行動をすればいいのかイメージできない方も悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
ポータブルスキルは、一朝一夕で身につくものではありません。小さな行動でもいいので、日々の積み重ねを習慣化していくのがポータブルスキルを鍛えるコツです。また、すべてを一度に伸ばそうとするより、自分の成長の方向性を定め、特定のスキルを集中して磨く方が効率的に成長できます。
本記事では、まずポータブルスキルの基本を整理した上で、どのスキルを伸ばすべきかの考え方を提示し、さらに具体的な鍛え方と習慣化のコツをご紹介します。読むだけでなく「やってみよう」と思える内容になっていますので、ぜひキャリア形成の一歩として活用してください。
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目次
1. ポータブルスキルとは
ポータブルスキルという言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのようなスキルを指すのか、なぜ重要なのかついては、意外と曖昧なままになりがちです。まずは、ポータブルスキルの正しい定義と特徴を押さえ、実際の仕事でどう活かされるのかを見ていきましょう。
1-1. ポータブルスキルの定義と特徴
ポータブルスキルとは、どんな会社や業界、職種でも活かせる「持ち運び可能なスキル」のことです。営業のノウハウやプログラミング技術といった特定の業務に必要な専門スキルとは異なり、どこに行っても通用する汎用性の高い能力を指します。例えば、問題を整理して解決策を考える力や、チームをまとめる力、相手に分かりやすく説明する力などがこれに当たります。
これらのスキルがあれば、転職や部署異動があっても、新しい環境で早期に成果を出すことができるのです。専門知識が特定の環境やツールに依存しやすいのに対し、ポータブルスキルは一度身につければずっと活用できる、まさに「人生の財産」と言えるでしょう。
1-2. ポータブルスキルの具体的な内容
厚生労働省の「職業能力評価基準」では、ポータブルスキルを「仕事の仕方」と「人との関わり方」に大きく分類しています。
※参考:ポータブルスキル見える可ツール(職業能力診断ツール)-厚生労働省(mhlw.go.jp)
仕事の仕方
- 現状の把握:情報収集やその分析を通じて、現状を正しく理解する力
- 課題の設定:現状を踏まえ、何を課題とするべきかを定義する力
- 計画の立案:課題に取り組むための具体的な行動を計画立てる力
- 課題の遂行:スケジュールや予算・人員の管理を行いつつ、業務を進める上での障害やプレッシャーを乗り越える力
- 状況への対応:予期せぬ状況に対応し、責任を取る力
人との関わり方
- 社内対応:経営層・上司・関係部署に対して納得のあるコミュニケーションをとり、支持を獲得する力
- 社外対応:顧客・社外パートナー等に対して納得のあるコミュニケーションをとり、利害調整・合意形成を行う力
- 上司対応:上司に対して適切な報告を行ったり、改善の意見を伝える力
- 部下マネジメント:メンバーの動機付けや育成、持ち味を活かした業務差配を行う力
ただ、この分類だけを見ても「実際の仕事でどう役立つのか」が少しわかりにくいかもしれません。現実のビジネスの場では、こうした要素が組み合わさって「課題解決力」や「調整力」といった形で語られることが多くあります。代表的なポータブルスキルを挙げると、以下のように整理できます。
- 課題解決力:問題の原因を見つけ出し、効果的な解決策を立案・実行する能力。
=「現状の把握」+「課題の設定」+「計画の立案」 - 実行力:計画を確実に遂行し、困難な状況でも粘り強く取り組む能力。
=「課題の遂行」+「状況への対応」 - 調整力:社内外の関係者との調整や交渉を円滑に進める能力。
=「社内対応」+「社外対応」 - 提案力:相手のニーズを理解し、価値のある提案を分かりやすく伝える能力。
=「課題の設定」+「計画の立案」+「社外対応」 - マネジメント力:チームや部下を効果的に管理し、成果を最大化する能力。
=「部下マネジメント」+「課題の設定」+「課題の遂行」 - ファシリテーション力:会議や議論を建設的に進行し、合意形成を図る能力。
=「社内外対応」+「課題の設定」+「状況への対応」
これらはいずれも業界や職種を問わず活かせる基本能力であり、キャリアの選択肢を広げる重要な土台となります。
1-3. ポータブルスキルは「知っている」だけでは身に付かない
ポータブルスキルについて書籍で読んだり、研修で学んだりしても、それだけでは実際のスキルとして身につきません。例えば、課題解決の手順を知っていても、実際の業務で問題に直面したときに、適切に原因分析ができて効果的な解決策を実行できるかどうかは別の話です。習得した知識を現場で使いこなすためにはもう一段階、実践のプロセスが必要です。
ポータブルスキルは、日々の業務の中で繰り返し実践し、失敗と改善を重ねることで初めて自分のものになります。つまり、スキルを「知っている」状態から「使える」状態に変えるためには、意識的な実践と継続的な振り返りが欠かせないのです。この理解こそが、効果的にポータブルスキルを鍛えるための第一歩となります。
2. あなたが伸ばすべきポータブルスキルは?
ポータブルスキルの重要性は理解できても、「どのスキルから手をつければいいのか分からない」と感じる人は多いものです。しかし、すべてのスキルを均等に鍛える必要はありません。あなたの現在の状況や将来の目標、そして持っている強みによって、優先すべきスキルは変わってきます。ここでは、自分に最も適したポータブルスキルを見つけるための考え方をお伝えします。
2-1. 鍛えるべきスキルを選択する3つの観点
ポータブルスキルを鍛える際の方向性は、大きく3つの観点から考えることができます。
①課題解決の観点
課題解決の観点で考える際には、現在の業務で直面している問題を乗り越えるために必要なスキルを優先します。例えば、会議で意見がまとまらずに困っているなら、ファシリテーション力を鍛えることが効果的です。
②未来志向の観点
未来志向の観点で考える際には、5年後や10年後のキャリア目標を見据えて、将来必要になるスキルを先取りして身につけます。管理職を目指すならマネジメント力、コンサルタントを目指すなら提案力といった具合です。
③適性活用の観点
適性活用の観点で考える際には、自分が既に得意としていることを活かして伸ばせるスキルを選びます。例えば、人の意見を整理するのが得意な人はファシリテーション力を磨くと自然に成果を出しやすくなりますし、相手の立場に立って考えるのが得意な人は提案力をさらに伸ばすことで、市場で評価されやすい力になります。
どの観点を重視するかは人それぞれですが、この3つの視点で整理することで、自分にとって最も価値の高いスキルが見えてきます。
2-2. 得意を伸ばすことが成長の近道
もし、抱えている課題の解決や、目指す未来の実現といった明確な目的がない場合は、適性活用の観点に基づき得意を活かしてスキルを伸ばすことこそが、キャリア形成における最短の成長ルートです。なぜなら、どんな環境でも成果を出せる人は、「この人なら任せられる」という「信頼」を集めやすく、結果として市場でも高く評価されるからです。
「一度だけ大きな成果を出した人」よりも、「どんな環境でも成果を再現できる人」の方が長期的に信頼され、市場価値も高まります。そして、再現性ある成果を生み出すためには、弱点を克服するよりも得意なことを伸ばす方がはるかに効果的です。例えば、人をまとめることが得意な人は、その強みを活かしてマネジメント力やファシリテーション力を伸ばすことで、より高い成果を期待できます。複雑な状況を整理することが得意な人は、課題解決力を重点的に鍛えることで、問題解決のスペシャリストとして価値を発揮できるでしょう。
心理学では、人は強みを活かす方が学習効果も高く、成果も持続しやすいとする「ストレングス・ベースド・アプローチ」という考え方があります。またキャリア理論においても、環境を変えても持ち運べる「キャリア資本」こそが市場価値を決めるとされています。つまり、自分の適性を活かしてポータブルスキルを磨くことが、最も効率的で効果的なキャリア戦略なのです。この「適性×ポータブルスキル」の掛け算こそが、あなただけの競争優位性を生み出します。
2-3. 自分の適性を見極める問いかけ
自分の適性を客観的に把握するためには、以下のような問いかけが効果的です。
- 人からよく褒められることは何ですか?:周囲から見た長所が浮き彫りになります
- 仕事で自然に成果が出せるのはどんなときですか?:無意識に発揮している能力が見えてきます
- 周囲からよく頼まれる役割は何ですか?:他の人があなたに期待している強みが明確になります
これらの問いに答えることで、あなたが磨くべきポータブルスキルの方向性が自然と見えてくるはずです。自分の適性は意外と自分では気づきにくいものなので、信頼できる同僚や上司に聞いてみることも大切です。自分の適性を正しく理解することが、効果的なスキル開発の出発点となります。
3. ポータブルスキルの鍛え方
いよいよ、ポータブルスキルを実際に鍛える方法について詳しく見ていきましょう。スキルの習得には共通する原則があり、それを理解することで効率的に成長できます。また、市場価値に直結しやすい代表的なスキルについて、具体的な鍛え方をお伝えします。重要なのは「完璧を求めず、小さな実践から始める」ことです。
3-1. ポータブルスキルを伸ばすための4つの原則
どのポータブルスキルを鍛える場合でも、共通する4つの原則があります。
- ①「実践を通じてこそ身につく」:
書籍や研修で理解できても、それはスタートラインに過ぎず、実際の業務で使ってみて初めてスキルとして定着します。 - ②「小さな行動から始める」:
一気に大きく変えようとせず、日常業務に小さなチャレンジを仕込むことで、無理なく継続できます。 - ③「言語化と振り返りで定着させる」:
やって終わりではなく、簡単な振り返りをすることで学びがスキルとして根付きます。 - ④「フィードバックを受ける」:
自分では気づけない課題を、周囲からの反応を通じて修正していくことで、より実践的なスキルが身につきます。
この4つの原則を意識することで、どんなスキルでも確実に成長させることができます。
3-2. 代表スキル別の具体例
ここでは、市場価値に直結しやすい3つのスキルに絞って、具体的な鍛え方をご紹介します。
課題解決力の鍛え方
課題解決力を伸ばすには、「大きな問題を一気に解決しよう」とするのではなく、小さな課題を自分で見つけて改善する習慣を持つことがポイントです。なぜなら、日常業務の中での小さな改善の積み重ねが、仮説を立てる力や実行力のトレーニングにつながるからです。
- 具体例:
・業務生産性を高めるために、社内のやりとりにかかる時間を短縮する工夫を試す
・会議が長引いてしまうなら、進行の工夫を提案してみる
「課題を発見する目」と「解決策を試す行動」を小さく繰り返すことが、課題解決力を磨く近道です。
提案力の鍛え方
提案力を高めるには、「相手にとって役立つ視点を提供する」姿勢を意識することが重要です。ただ意見を言うのではなく、「相手の立場に立った一歩先の提案」をすることで、信頼につながります。
- 具体例:
・会議で議論がまとまらない時に「選択肢を2つに絞って検討しませんか?」と提案する
・「この件は来週までに結論を出しませんか?」とスケジュールの提案をする
提案力は「数をこなす」ことで磨かれるので、会議や打ち合わせでは必ず1つ提案することを習慣にすると効果的です。
調整力・ファシリテーション力の鍛え方
調整力やファシリテーション力を磨くには、「場を前に進める役割を引き受ける」ことが大切です。利害の異なる人同士の意見を整理したり、会議を建設的に進行したりする経験を重ねることで、徐々にスキルが身についていきます。
- 具体例:
・会議で「進行役」を一度でも買って出る
・意見がぶつかったら「今のAさんは◯◯、Bさんは△△と整理できますね」と要約する
・議論が広がりすぎたら「次に話し合うべきポイントは何でしょうか?」と論点を整理する
調整力やファシリテーション力は「経験してみること」でしか鍛えられません。最初は不安でも、まずは一度進行役に挑戦してみることが何よりの一歩です。
これらの具体例は他のスキルにも応用できるので、自分が選んだスキルに当てはめて考えてみてください。
4. ポータブルスキルを身に付けるための習慣を作るには?
スキルの鍛え方が分かっても、それを継続できなければ意味がありません。多くの人が「最初はやる気があったのに続かない」という経験をしています。ここでは、ポータブルスキルの習得を確実に習慣化するために必要な心構えと具体的な仕組みについてお伝えします。
4-1. ポータブルスキル習得においてぶつかりやすい壁
ポータブルスキルを鍛えることは、単にスキルを学ぶのではなく「自分自身を変える挑戦」です。そこで障壁となりやすいのが自分自身の抵抗感。慣れない行動がうまくいかず「やっぱり自分には無理かも」と自己肯定感を下げてしまったり、頑張っている自分をどこか冷めた目で見てしまったり、周囲からどう思われているか気になってしまったり。こうした心のブレーキによって、多くの方がスキルの習得を断念してしまいます。
その上で大切になるのが、挫折を乗り越えるためのマインドセットです。ポータブルスキルを習得する中では、ぜひ以下のようなことを意識してみてください。
- 違和感は成長のサイン:
新しい行動がぎこちないのは当たり前。むしろ成長している証拠です。 - 完璧を求めない:
100点を目指す必要はありません。小さな挑戦を積み重ねること自体に価値があります。 - 自分を冷めた目で見てしまうのは自然なこと:
挑戦しているからこそ感じる感情です。成長の証と受け止めましょう。 - 周囲は自分の業務に集中しており、過度に心配する必要はない:
むしろ挑戦している姿勢そのものが周囲からの信頼につながります。
こうした精神的な壁を「成長の証」として受け止めることで、挑戦を続けるエネルギーが生まれ、継続的な成長につながります。
4-2. 習慣化のコツ
行動を一度で終わらせず「続ける」ためには、適切な仕組みづくりが欠かせません。行動を定着させるために、ぜひ以下の点を踏まえ、一つだけでもいいので日々の行動に組み込んでみてください。
- 小さく始める:
「会議で1回質問する」「1日1つ改善案を考える」など、最小単位の行動から始めると、行動が定着しやすくなります。 - 振り返りを仕組みにする:
日報やメモに「今日挑戦したこと/気づいたこと」を一行残すだけでも、その日一日が意味のあるものとなり、学びが定着します。 - 周囲の力を借りる:
上司や同僚に「今これを意識して取り組んでいます」と伝えておくと、周囲からの視線を意識して取り組みが続きやすくなり、フィードバックも得やすくなります。
習慣化するために大切なのは「努力を続けること」ではなく「努力しなくてもできる状態をつくること」です。無理せず自然に続けられる仕組みを作ることが、長期的な成長の鍵となります。これらの仕組みを活用することで、ポータブルスキルの習得を確実に自分のものにできるでしょう。
5. まとめ
ポータブルスキルは、どんな会社や業界でも通用する「一生の財産」です。しかし、知識として理解するだけでは意味がなく、日々の実践を通じて初めて身につくものです。あなたの強みを活かしたスキルを選び、小さな挑戦から始めて、継続的に振り返りを行うことで、確実に成長できます。最初は違和感があっても、それは成長している証拠だと捉えて前向きに取り組んでください。完璧を求めず、小さな一歩を積み重ねることが、やがて大きな成果につながります。あなたのキャリアを支える強力なスキルを、今日から育てていきましょう。