「営業職に興味はあるけれど、有形と無形、どちらを選ぶべきか迷っている」
そんなふうに感じている方は、きっと多いのではないでしょうか。未経験でも始めやすいのは? 将来性は? 収入や働き方の違いは?──いざ選ぼうと思ったとき、判断基準がわからず、比較サイトやSNSの意見を探している方もいるかもしれません。
たしかに挑戦のしやすさや、収入、働き方も仕事選びの大切な要素です。しかし、本当に大切なのは、「どちらが得か」ではなく、「自分に合う仕事とは何か」を考えることではないでしょうか?
その点、一言に「有形商材営業」といっても多様な仕事スタイルや魅力があります。商材によっては生活に直結する身近さがあったり、業界特有の専門性を深められたりと、働き方や成長の形はさまざまです。
本記事では、有形商材営業に焦点を当て、無形営業との違いを傾向として紹介しつつも、損得だけでは見えてこない“仕事の魅力”や“やりがい”に光を当てます。そのうえで、「自分の性格や価値観と照らして、有形営業はどうだろう?」と考えるための材料をお届けします。
自分にとってしっくりくる営業スタイルを見つけたい。そんなあなたにこそ、読んでほしい記事です。
目次
- 1. 有形商材と無形商材の営業の違い
- 2. 一言では語れない、有形商材の多様な営業スタイル
- 3. 有形商材営業のやりがい・面白さ
- 4. キャリア視点で見た、有形営業の将来性
- 5. 有形営業に向いている人とは?自分の適性を照らし合わせてみよう
- 6. まとめ
1. 有形商材と無形商材の営業の違い
「有形商材営業」と聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?「モノを売るからシンプル?」「古い営業スタイル?」「安定してそうだけど成長はどうなんだろう?」──こうした疑問に応えるために、ここではよく比較される"無形商材営業"と、有形営業を5つの視点で見比べていきます。
もちろん、ここで紹介するのはあくまで傾向であり、実際には企業や商材によって当てはまらない例も多々ありますが、おおよその傾向を押さえておくことで「自分の目指したい方向性」を考えるのに役立ちます。
1-1. キャリアスタートのしやすさ:未経験でも始めやすいのは?
| 無形営業 | 有形営業 |
|---|---|
| 課題ヒアリングや提案設計など、 抽象度の高いテーマを言語化するスキルが 求められる傾向 | モノの魅力をベースにした営業が多いが、 扱う商材への専門知識も求められる |
無形商材営業では、課題ヒアリングや提案設計といったプロセスが多く、扱う情報が抽象的であるため、提案内容を構築するまでに多くの思考が求められます。一方、有形商材営業では、商品そのものの魅力をベースに話ができるため、提案の枠組みが明確になりやすいですが、扱う商材に対する深い専門知識も求められる傾向にあります。それぞれに異なる難しさとやりやすさがあり、営業未経験の方にとっては「どちらの思考スタイルが合いそうか」を考えるヒントになります。
1-2. 市場価値・スキル汎用性:どっちが"キャリアの武器"になる?
| 無形営業 | 有形営業 |
|---|---|
| 課題解決・抽象的提案・論理的思考力などの ポータブルスキルが身につきやすい | 信頼関係構築力、調整力といったスキルと共に、 製品知識・業界知識などの専門性が身に付きやすい |
無形営業では、抽象的な課題に対してゼロから提案を設計するため、論理的思考やヒアリング力、課題解決力といった、どんな業界でも活かせるポータブルスキルが身につきやすい傾向があります。
一方で、有形営業においても、信頼構築力や説明力、製造・納品までを社内外と連携しながら行う調整力といった多くの業界で求められるスキルが身に付きます。また、技術的な観点も含めた深い製品知識や業界知識が身に付き、専門性を高めやすいのも特長です。市場価値の上がり方にも個人差はありますが、スキルの伸び方や深まり方にそれぞれの特徴があります。
1-3. 仕事の難易度・裁量:どれくらい考える力が必要?
| 無形営業 | 有形営業 |
|---|---|
| 顧客課題を発見し、解決手段をゼロから設計する 提案型が主流 | 商材が明確なので、 顧客ニーズに沿った提案がしやすい傾向 |
有形商材の営業では、明確な商品があるからこそ、「どう組み合わせれば顧客の課題を解決できるか」「現場でどう運用されるか」という具体的な実装力・想像力が問われます。一方で、無形商材の営業は、決まった型がない分、顧客の抽象的な悩みに対して解決のシナリオを一から設計し、ゴールへの道筋を描く力が求められます。
無形営業が「0から1を作る企画力」なら、有形営業は「1ある商品を10にも100にも活用させる応用力・現場実装力」が必要です。思考の"種類"が違うだけで、考える深さは変わりません。
1-4. 年収・評価軸:どちらが稼げる?評価されやすい?
| 無形営業 | 有形営業 |
|---|---|
| 高単価商材が多く、成果が明確なら高年収につながる | 商材によるが、ルート営業などでは安定収入傾向。 メーカーは昇給カーブが緩やかな傾向 |
無形営業では、在庫や製造原価などの物理的コストが発生しないため、サービスの収益性が高く、成果に応じたインセンティブ設計がなされている企業も多くあります。一方、有形営業では、製造コスト・在庫リスク・流通コストなどの要素が加わるため、利益の安定性を重視した設計が多く、ルート営業やメーカー営業では定額の給与体系や昇給ベースが重視される傾向があります。
どちらが良いということではなく、「実力に応じて収益性を高める」スタイルか、「長期的な貢献を評価する」スタイルかの違いといえるでしょう。
1-5. ワークライフバランス:働きやすさは?
| 無形営業 | 有形営業 |
|---|---|
| 案件ベースの波があり、繁忙期は激務になることも | スケジュールが読みやすく、残業が少ない企業も多い傾向 |
ワークライフバランスは、商材の種類だけでなく、営業スタイルや業界の特性にも大きく左右されます。
たとえば無形商材でも、法人向けのSaaS営業などでは定型の商談スケジュールが組まれやすく、定時内で業務を終えやすいケースがあります。一方で、広告代理店など提案設計に時間がかかる業界では、納期前に業務が集中する傾向もあります。有形営業においても、ルート営業や既存フォロー中心のスタイルでは、スケジュールが安定しやすく、定時退社や土日休みを実現しやすいケースが多いです。反対に、納期や物流の都合で対応が必要になる場面もあり、業界によって差が生まれます。
重要なのは「有形だから楽、無形だから大変」とは一概に言えず、自分が働きたい環境・業界にどの営業スタイルが多いかを見極めることです。
ここで示した通り、商材の違いによって営業スタイルにも違いが生じますが、あくまでそれは傾向です。このあとのセクションでご紹介するように、実際には、有形商材営業にも多様なスタイルや、面白さ、キャリアの可能性があります。大切なのは、「あなたにとって何が大事か?」という視点。 比較だけでは見えてこない、「自分にとってのリアルな選択肢」を一緒に考えてみましょう。
2. 一言では語れない、有形商材の多様な営業スタイル
「有形商材の営業」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか?「決まった商品を売るだけ」──もしかすると、そんな印象を持っている人もいるかもしれません。
でも実際は、有形商材営業にもさまざまなスタイルがあり、求められるスキルや働き方の幅も広いのが現実です。このセクションでは、一般的なイメージと現場のリアルとのギャップを見ていきましょう。
2-1. 商社とメーカーで、営業スタイルはまったく違う
一言に「有形商材」と言っても、その営業のやり方は企業の立ち位置によって大きく異なります。
商社営業では幅広い商材を扱い、複数の取引先やパートナーをコーディネートしてビジネスを成立させる「プロデュース型」の側面が強く、価格交渉や納期管理だけでなく、商流全体を動かす交渉力・スピード感が問われます。一方、メーカー営業では自社製品への深い理解をもとに提案する「専門型」の営業で、顧客との関係を深めながら、製品改善やニーズ把握にも関与することがあります。同じ「モノを売る営業」でも、関わる範囲や求められるスキルはまったく違うのです。また、商社では多岐にわたる業界知識が必要になる一方、メーカーでは特定分野での専門性を深めていくというキャリアパスの違いもあります。
2-2. 対応型も提案型も、それぞれに価値がある
有形商材営業には、顧客の注文に丁寧に応える「受注対応型」の営業もあれば、課題を掘り下げて提案する「ソリューション型」の営業もあります。営業のスタイルは企業のビジネスモデルや顧客との関係性によって変わります。
受注対応型の本質は、顧客のビジネスを止めないこと。 定期的な訪問の中で、顧客の在庫状況や生産計画を先読みし、欠品を起こさないように手配する。顧客のサプライチェーンの一部を担う、責任と信頼が求められます。一方、ソリューション営業では顧客の課題を把握し、それに合った製品やサービスの提案を行うため、提案力やヒアリング力が求められます。どちらのスタイルにも、顧客との関係構築力や商品知識、誠実な対応力が共通して求められ、「お客様のことをよく知って、必要なタイミングで必要なモノを届ける」「課題の先回りをして、より良い提案をする」──アプローチは違っても、どちらも営業として価値ある仕事です。
2-3. 商品サイクルの早さ・遅さでも営業スタイルが変わる
扱う商材の「更新スピード」によっても、営業の動き方は変わります。
商品サイクルが早い場合(例:日用品、消耗品)は、担当件数が多く、テンポ重視で短期的な成果が求められます。商品サイクルが遅い場合(例:住宅設備、産業機械)は、顧客と長期的な関係を築き、丁寧な提案が重視されます。つまり、有形営業といっても、スピード勝負の営業が向いている人もいれば、じっくり寄り添う営業が合っている人もいるということです。これは自分の性格や働き方の好みに合わせて選択できる多様性があることを意味しており、「自分に合う営業スタイルはありそうか?」を探るヒントにもなります。
有形商材営業には一つの型に収まりきらない多様性があり、今は顧客との信頼関係をどう築くかが問われる時代なのです。
3. 有形商材営業のやりがい・面白さ
ここまで「有形商材営業の比較」や「多様なスタイル」について紹介してきましたが、では実際にこの仕事を続けている人たちは、どんなところにやりがいや面白さを感じているのでしょうか?
このセクションでは、実際の現場でよく聞かれる声をもとに、有形営業ならではの魅力を紐解いていきます。「こういう仕事の楽しさ、ちょっといいな」と思える要素が一つでもあれば、それはあなたとこの仕事が"ハマる"サインかもしれません。
3-1. 商品に自信を持って提案できる「安心感」がある
有形商材は"モノ"としての価値が目に見えるため、商品そのものの魅力を軸に話ができるという安心感があります。「この製品はこういう特長があって、実際にこう使えます」「この大きさ・形状が、現場ではとても重宝されるんです」など、スペックや実物をもとに会話ができるので、営業トークに自信が持ちやすいのがポイントです。営業未経験の人でも、「話のタネが商材にある」というだけで大きな助けになります。また、実際に商品を手に取ってもらったり、デモンストレーションを行ったりすることで、お客様の理解を深めやすく、説得力のある提案ができるという利点もあります。抽象的な概念を説明する必要がないため、伝えたいことがストレートに伝わりやすいのです。
3-2. 顧客の「納得」や「反応」が見えやすい
目に見える商品を提案するからこそ、お客様のリアクションもダイレクトです。実物を見て「これは分かりやすいね」「これなら使えそう」と言ってもらえたり、実際に導入された製品が世の中に広がったり、現場で役立っているのを目にしたりといった瞬間は、営業としての達成感につながります。「モノを通じて人の役に立てている」という実感が持てるのは、有形商材営業ならではのやりがいです。さらに、導入後のフォローアップで現場を訪問した際に、「あの商品のおかげで作業効率が上がった」「コストダウンできた」といった具体的な成果を聞けることも多く、自分の仕事が確実に価値を生み出していることを実感できます。このような手応えは、日々のモチベーション維持にも大きく貢献します。
3-3. 商品理解が深まるほど、営業が楽しくなる
有形商材は「実物があるからこそ、深掘りできる」面白さもあります。製品の構造、使われ方、他社製品との違い──そうしたことを学び、理解が深まっていくと、提案の幅や深さも広がっていきます。営業であると同時に、「モノの伝道師」のような存在として、お客様に頼られるのも大きなやりがいです。技術的な質問を受けた時に的確に答えられるようになったり、お客様の用途に合わせて最適な仕様を提案できるようになったりすると、単なる営業担当者ではなく、信頼できるパートナーとして認識してもらえます。この専門性の蓄積は、自分自身の市場価値向上にも直結し、キャリアアップの強固な基盤となります。
3-4. 顧客との関係性が"積み重ね"で築かれていく
ルート営業や長期的な提案型の営業では、一回きりで終わらない関係性を築けることも大きな魅力です。「○○さん、いつもありがとう」と名前で呼ばれる関係や、新製品の相談を真っ先にしてもらえる信頼関係などを築いていけます。こうした積み重ねの中で、人と人とのつながりを実感できる仕事でもあります。目先の成果だけでなく、長く信頼される営業であることに価値を感じる人にとっては、大きなモチベーションになります。また、長期的な関係だからこそ、お客様の事業の成長を間近で見ることができ、その成長に自分も貢献しているという実感を得られるのも大きな魅力です。時には家族のような関係性を築けることもあり、仕事を通じた人生の豊かさを感じられます。
3-5. 「モノ」と「人」をつなぐ役割を担える
「商品を売る」ことは、単にモノを届けることではなく、“お客様にとっての意味を形にする仕事”です。
たとえば最新のスマホを提案するときでも、営業によって伝え方は変わります。ある営業は高性能なカメラや処理速度といった機能性を強調し、別の営業は「持っているだけで最先端の自分でいられる」というトレンド性を打ち出すかもしれません。さらに「バッテリーの劣化が少なく、OSのアップデートやサポートも長期間安心」という将来への安心感を伝える営業もいるでしょう。同じ商品でも、営業と顧客の対話次第で“どんな意味を持つモノになるか”が変わる──そこに有形営業ならではの面白さがあります。
そして、こうした対話の中から拾い上げた「本当はこんな機能が欲しい」「ここがもっと便利になればいいのに」という声は、メーカーにとって新しい商品開発のヒントになります。営業は単に商品を届けるだけでなく、メーカーの技術者とお客様をつなぐ橋渡し役として、市場のニーズを伝え、未来のモノづくりに貢献する重要な役割も担っているのです。
あなたにとって「面白そう」と思えるポイントがあれば、それは一つの適性のサインかもしれません。やりがいだけでなく、続けた先に何があるかも、一緒に考えていくことが大切です。
4. キャリア視点で見た、有形営業の将来性
「仕事として面白そう」だけでは、なかなか一歩を踏み出せないのも事実です。とくに営業未経験の方にとっては、この仕事を選ぶことで将来どんなキャリアが広がるのかも気になるポイントではないでしょうか?
ここでは、有形商材営業を経験することで得られるスキルや、今後のキャリアの可能性について紹介します。
4-1. 営業職としての"土台"がしっかり身につく
有形商材営業では、顧客との信頼関係の築き方、製品知識の学び方、相手に伝わる説明の仕方、数字や成果への責任感といった、営業職としての基本スキルをしっかり習得することができます。これらの力は、有形・無形問わず、どんな営業職にも求められる普遍的なスキルです。「まずは営業職としてのベースを固めたい」という人にとって、有形商材営業は良い選択肢になり得ます。特に、商品の特徴を分かりやすく説明する力や、お客様の要望を正確にヒアリングする力は、営業の基本中の基本として、どの業界でも重宝されます。また、目標達成に向けた計画立案や進捗管理の経験も、将来のマネジメント職において大きな武器となります。
4-2. 職種を越えて"活かせるスキル"が身につく
有形営業で培った力は、他職種でも活かせることが多くあります。たとえば、メーカー営業で培った製品理解・市場分析スキルを活かしてBtoBマーケティング職へ、商社営業で培った交渉力や商流知識を活かして海外営業・調達部門へ、ルート営業で培った信頼構築スキルを活かして人材・教育・不動産など他業界の営業職へといったキャリアチェンジを実現する方もいます。営業経験は、どの業界においても「ビジネスの最前線を知っている」価値ある経験として評価されやすく、キャリアチェンジの幅を広げてくれる"土台づくり"としても機能します。また、お客様の立場で物事を考える力や、相手に分かりやすく説明する力は、営業以外の職種でも高く評価されるスキルです。
4-3. プレイヤーからマネジメントへの道も
有形営業の現場では、組織的な営業活動やチームでの目標管理に関わる機会も多く、数年の経験を積んだ後は、リーダー職やマネージャー職へのステップアップも現実的です。担当エリアの営業戦略を考える、チームメンバーの育成に関わる、売上目標の設計と進捗管理を担うといった経験を通して、「売る人」から「チームをつくる人」へとキャリアを広げることもできます。特に、有形営業では数字が見えやすく、成果を定量的に評価しやすいため、マネジメント能力を客観的に示しやすいという利点があります。また、商品知識や業界知識の蓄積により、部下への指導やアドバイスにも説得力を持たせることができ、効果的なマネジメントを実践できます。
4-4. 「どんな営業になりたいか」を考えるきっかけになる
有形商材営業は、"答えのある営業"からスタートしやすいため、未経験でも「営業という仕事の面白さ・難しさ」を肌感覚で学びやすい環境です。そして経験を積む中で、「もっと課題解決型の営業がしたい」「マーケティングや商品企画にも関わりたい」「営業を極めたい」または「違う職種に挑戦したい」といった"次のステップ"が自然と見えてくるケースも多いのです。営業の基本を学びながら、自分の興味や強みを発見していけるのは大きなメリットです。また、お客様や社内の様々な部署との関わりを通じて、自分がどんな分野に興味を持つのか、どんな働き方が合っているのかを実際に体験しながら見極められるのも魅力の一つです。「有形商材営業」は、キャリアの"ゴール"というよりも、これからキャリアを築いていく人にとっての"スタートライン"として選ばれることが多い仕事なのです。
4-5. 「現場」を知る人材は、AI時代でも強い
デジタル化が進む中でも、モノが動き、現場が動くことで経済は回っています。有形商材営業は、顧客の現場に足を運び、現物を見て、現場の人と対話をする仕事です。 データだけでは見えない「現場のリアルな課題」肌感覚で知っている人材は、どんなにAIが進化しても代替できない、希少性の高い市場価値を持ち続けます。
5. 有形商材の営業に活かせる特性
ここまで、有形商材営業の特徴やスタイル、やりがい、そしてキャリアの可能性について紹介してきました。ここで改めて、「自分に合っているかもしれない」と感じた方もいれば、「面白そうだけど、自分にできるかな?」と不安を感じている方もいるかもしれません。
このセクションでは、有形営業でよく求められる素養や性格傾向をいくつか紹介します。絶対的な「向き・不向き」ではなく、自分自身の"ハマりそうな感覚"を探すヒントとして活用してください。
5-1. コツコツ型の人間関係構築が得意な人
有形営業では、短期で成果を出すよりも、信頼関係を少しずつ積み重ねていくプロセスが大切にされる場面が多くあります。「初対面より、2回目、3回目でやっと関係が深まる」──そんなタイプの方にとっては、心地よい営業スタイルになりやすいです。一度の訪問で契約を決めるよりも、定期的な訪問を通じてお客様のことを深く理解し、長期的な関係を築いていくことを重視します。相手の話をじっくり聞き、小さな変化にも気づける観察力がある人は、この環境で力を発揮しやすいでしょう。また、約束を守る誠実さや、継続的にコミュニケーションを取れる粘り強さも重要な素質です。
5-2. 目に見えるものに価値を感じやすい人
商品が「カタチとしてある」ことに安心感を持てる方や、「自分が納得できるものを人に勧めたい」という価値観のある方は、有形営業にフィットしやすい傾向があります。実物の魅力を言葉で伝える力は、有形営業で大きな武器になります。商品の質感や機能性、デザインなどを具体的に説明でき、自分自身もその価値を心から理解している人は、お客様にも説得力のある提案ができます。また、「この商品なら間違いない」という自信を持って勧められることで、お客様からの信頼も得やすくなります。モノづくりや技術に興味がある人も、この分野で活躍しやすい傾向があります。
5-3. 人の役に立つ実感を大切にしたい人
有形営業では、お客様の現場で商品が使われている様子を直接見ることができたり、納品後に「助かったよ」と感謝されたりと、成果を実感できる瞬間が多い仕事です。「ありがとう」にやりがいを感じられる人には、続けやすい環境だといえるでしょう。自分が提案した商品が実際に問題解決に役立っているのを目の当たりにできるため、仕事に対する充実感を得やすいのが特徴です。また、お客様の業務改善や効率化に貢献できたときの達成感は、次の仕事への原動力にもなります。社会貢献意識が高く、自分の仕事が世の中の役に立っていることを実感したい人には最適な環境です。
5-4. 専門知識や製品理解に興味がある人
取り扱う商材によっては、製品仕様や業界知識をしっかり学ぶ必要があります。「知識が増えることが楽しい」「プロフェッショナルとして頼られたい」と感じる人は、有形営業で自然に力を伸ばしていける可能性が高いです。技術的な説明書を読むことに抵抗がなく、むしろ興味を持って取り組める人や、お客様からの専門的な質問に答えられるよう勉強することを苦にしない人は向いています。また、業界の動向や競合他社の情報収集を積極的に行い、常に最新の知識をアップデートしていこうという姿勢のある人も重宝されます。学び続けることで、単なる営業担当者ではなく、その分野の専門家として認識してもらえるようになります。
5-5. 誠実で、相手の立場で考える姿勢がある人
有形営業の現場では、「この商品が本当に相手にとって役に立つのか?」を考える姿勢が重視されます。強引に売るより、"必要なものを、必要なタイミングで"届ける営業が信頼される世界です。そのため、派手なプレゼン力よりも、誠実さや傾聴力が活きる仕事でもあります。お客様の予算や現状を理解し、無理な提案をしないという倫理観も大切です。時には「今は必要ない」「他社の商品の方が適している」という判断をすることもありますが、そうした誠実な対応が長期的な信頼関係につながります。また、お客様の業界や事業について積極的に理解しようとする姿勢があれば、より価値の高い提案ができるようになります。
向いているかどうかより、「やってみたい気持ちがあるかどうか」が最も重要で、「ちょっと興味が湧いた」「やってみたいかも」と感じたら、それは十分な適性のサインなのです。
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6. まとめ
有形商材営業は、実に多様で奥深い仕事です。未経験から挑戦できるフィールドも多く、そこで培われるスキルは将来のキャリアにとって大きな財産となります。さらに、目に見える商品を通じてお客様の役に立てる実感や、長期的な信頼関係を築ける喜びは、この仕事ならではの魅力といえるでしょう。
もしあなたが「人との関係を大切にしたい」「着実にスキルを身につけたい」「安定したキャリアを築きたい」と考えているなら、有形商材営業はきっと良い選択肢となるはずです。完璧な適性を持っている必要はありません。大切なのは、この仕事に興味を持ち、挑戦してみたいという気持ちです。
営業という仕事は、経験してみなければ分からない面白さがたくさんあります。有形商材営業から始めて、自分なりのキャリアを築いていく──そんな第一歩を踏み出すことで、きっと新しい可能性が見えてくるでしょう。あなたの挑戦を心から応援しています。