「中途採用における面接って、新卒採用の面接と何か違うの?」転職を決意し、初めての面接を迎える方にとって、中途採用の面接は未知の領域。どのような質問が来るのか、どのように答えれば良いのか、緊張するのは当たり前だと思います。
この記事では、中途採用における一般的な面接の内容をお伝えしつつ、面接に向けた事前準備のポイントを解説。本番であなたの実力を100%発揮できるよう、面接で聞かれる質問やその裏にある採用担当者の意図、それに応えるために何を備えるべきかを伝えていきます。
目次
1. 中途採用面接の基本的な流れ
中途採用では、「既に社会人経験のある人を雇用する」という前提があります。その為、仕事や企業への理解が浅い新卒採用と比べると面接回数が少なく、選考期間が短くなる傾向があります。また、企業規模や選考において重視するポイントによって面接回数や方法も変わるので、形が一概に決まっているわけではありません。このセクションでは、中途採用の面接でよくある選考のパターンをお伝えします。
選考の内容と特徴
- 複数回の面接を行う場合
中途採用では2~3回程の面接を通じて選考を行うケースが多いです。それぞれの面接において、立場の異なる担当者が参加し、各々の視点で応募者の評価を行います。
たとえば、一次面接では人事担当者が企業説明を行いつつ、基本的な経歴や人柄が自社に合うかどうかを確認。二次面接では配属先の上司や責任者によって職務スキルやレベル、自部署との相性などをチェック。最終面接では役員などの決裁者が面接を行い、採用するかどうかを決定する、など。
その内容は企業によって異なりますが、面接ごとに求められるポイントを押さえた準備が鍵となります。 - 面接が一回のみの場合
社長との距離が近い中小企業や、配属部門が採用の決裁権を持っているケースでは、一度の面接で採用が決まる場合もあります。そこで話が合えばスピードも早く、スムーズに転職活動を進められるメリットもありますが、企業、応募者双方がその場でお互いを理解し決断をする必要があるため、伝えそびれや聞きそびれが生じないようにしっかりと準備をして臨むことが大切です。 - カジュアル面談
自社のカルチャーに合う社員を採用するために、選考を抜きにした非公式な場として「カジュアル面談」を設ける企業も増えています。応募者が希望した場合や、本選考が始まる前、もしくは選考の途中でカジュアル面談が実施されることがあります。企業、応募者の相互理解を目的に、リラックスした雰囲気で行われるのが特徴です。
会社の文化や業務内容、チームの雰囲気を具体的に知ることができたり、面接の場では話しにくいことも気軽に聞けるのがメリット。
一方、非公式とはいえ、企業側も求職者の印象を見ています。かしこまりすぎる必要はありませんが、最低限のビジネスマナーを守ることが大切です。また、あくまで相互理解の場なので、一方的に説明を聞くのではなく、自分が知りたいことをしっかり整理しつつ、質問を用意して臨む姿勢が重要です。 - オンライン面接
コロナ禍の影響もあり、ビデオ通話を利用して面接を行う企業も増えました。特に遠方の企業の選考にオンライン面接で参加するようなケースも多く、オンラインによって転職の選択肢も広がっています。
一方で、オンライン面接はインターネットの接続状況などの影響を受ける可能性もあり、環境を整える必要があります。また、照明や背景によって見え方が変わったり、相槌やアイコンタクトなどの非言語コミュニケーションが伝わりづらかったりと、オンラインでは自分が意図したような印象を相手に与えるのが難しくなります。オンライン上でも自信を持って自己表現できるよう、事前に準備をしておくことをおすすめします。 - グループ面接
新卒採用ほど頻繁に行われるわけではありませんが、稀に中途採用において、複数候補者の比較検討や、協調性やリーダーシップといったコミュニケーション特性を把握するためにグループ面接を取り入れる企業もあります。
比較対象となる他者がいると、埋もれないように過度な自己アピールをしてしまったり、遠慮して自分を上手く出せなかったりすることもあるかもしれませんが、柔軟性を持って、他の候補者の発言機会や意見を尊重しながら、自分の意見も場に反映させていくことが大切です。
2. よく聞かれる質問とその意図
中途採用の面接においてどのような質問がされるかは企業によって様々ですが、ここではよくある代表的な質問の例と、企業がその質問を通じて何を見極めようとしているのかを解説します。企業の意図を理解することで、より効果的な回答の準備が可能になるでしょう。
自己紹介
質問例:「簡単に自己紹介をお願いします。」
企業の意図: 自己紹介からは、その人の人となりだけではなく、自己認識力やプレゼンテーション能力が表れます。自己紹介では、企業は以下の点に注目します:
- 自分の経歴や強みを簡潔かつ効果的に伝える能力
- コミュニケーションスキルと自信の程度
- これまでの経験をどのように活かそうとしているか
- 企業文化や求める人材像との適合性
また、この質問は面接の流れを作る上でも重要で、候補者の回答によって、その後の質問の方向性を決める場合もあります。
志望動機
質問例:「なぜ当社を選んだのですか?」
企業の意図: この質問の回答からは、企業への理解や適合性を把握することが出来ます。企業は具体的に以下の点に注目します:
- 企業研究の深さと理解度(企業の事業、文化、価値観への理解)
- 長期的なコミットメントの可能性(一時的な興味ではなく、本質的な共感があるか)
- 意思決定に至るまでの思考プロセス
- 仕事観や仕事に向き合う姿勢
- キャリアプランと企業のビジョンの整合性
- 他の競合企業ではなく、なぜこの企業を選んだのかの具体的理由
- 候補者の価値観と企業の価値観のマッチング
その企業で働く必然性が表れる質問なので、しっかりとした根拠を形成し、自分の言葉で伝えることが重要です。
強みと弱み
質問例:「あなたの強みと弱みを教えてください。」
企業の意図: この質問には複数の意図があります:
- 自己認識の深さと客観性の評価(自分自身をどれだけ理解しているか)
- ポジションとのマッチング(強みが職務要件と合致しているか)
- 成長意欲と自己改善の姿勢(弱みを認識し、改善しようとする意欲があるか)
- ストレス下での自己表現能力(弱みを聞かれた時の対応)
- チームワークへの適性(自己の特性がチーム内でどのように機能するか)
企業は、候補者が自己の特性を理解し、それが職場でどのように活きるかに注目します。
前職での業務内容
質問例:「前職での具体的な業務内容を教えてください。」
企業の意図: この質問を通じて、企業は以下の点に注目します:
- 実務経験の深さと質(応募ポジションに関連する経験があるか)
- 責任の範囲と達成した成果(どの程度の責任を任されていたか)
- スキルセットの適合性(保有スキルと求める人材像のマッチング)
- 問題解決能力と創造性(業務上の課題にどのように対処したか)
- チームワークとリーダーシップのポテンシャル(チーム内での役割や貢献)
仕事の実績はもちろんですが、実績を上げるまでのプロセスや、仕事に関わるスタンスに企業は注目しています。また、異なる業界や所属の違う企業の人に自分の仕事のことを伝えるのは、意外と複雑で難しいことです。この質問への回答から、候補者の説明能力や、複雑な情報を簡潔に伝える力も表れます。
キャリアビジョン
質問例:「将来のキャリアビジョンは何ですか?」
企業の意図: この質問を通じて、企業は以下の点に注目します:
- 長期的なコミットメントの可能性評価(企業内でのキャリア構築を考えているか)
- 自己成長への意欲と計画性(キャリアアップのための具体的な計画があるか)
- 企業のビジョンとの整合性(個人の目標と企業の方向性が合致しているか)
- 野心と現実性のバランス(実現可能で意欲的なビジョンを持っているか)
- 変化への適応力(将来の不確実性にどう対応する予定か)
キャリアビジョンは、個人の成長意欲が表れるポイントです。企業は、候補者のキャリアに対する主体性や、企業と共に成長していく姿勢に注目します。
転職理由
質問例:「転職理由は何ですか?」
企業の意図: この質問は非常に重要で、その回答から以下のようなことを読み取ることができます:
- 現在の職場に対する姿勢(現職について否定的すぎないか、建設的な視点を持っているか)
- キャリア決定の判断基準(何を重視して転職を決意したか)
- 問題解決能力(現職での課題にどのように対処しようとしたか)
- 自己成長への意欲(新しい環境で何を学び、どう成長したいと考えているか)
- 企業文化との適合性(求める環境が自社の文化と合致しているか)
- 長期的な定着の可能性(同じ理由で再び早期退職しないか)
企業は、候補者の転職の動機を理解することで、その人物の価値観、キャリア観、そして将来の行動パターンを理解しようとしています。また、困難な状況にどのように対処するかという問題解決能力にも注目しています。
3. 面接に向けた具体的な準備方法
面接は、単なる質疑応答の場ではありません。あなたと企業がお互いの価値観やビジョンを共有し、相互に価値を提供できるかを確認する重要な機会です。
面接の準備において大事なのは、企業のニーズに合わせて回答を作り上げることではなく、むしろ、自分自身を深く理解し、自分の価値を明確に伝える言葉を磨くことです。以下に、効果的な面接準備の方法を詳しく説明します。
1. 徹底的な自己分析
自己分析は、面接準備の最も重要な基盤です。単にスキルや経験の棚卸しをするのではなく、自分自身の価値観、強み、そして将来の目標を深く掘り下げるプロセスが必要です。
- 価値観の明確化: あなたが仕事や人生で大切にしていることは何か?どのような環境で最もモチベーションが上がるか?
- 強みの特定: あなたの特徴的なスキルや能力は何か?これまでの経験(学生時代も含む)でどのような成果を上げてきたか?
- 成長の軌跡: これまでのキャリアや学びの中で、どのように成長してきたか?その過程で得た洞察は何か?
- 将来のビジョン: 5年後、10年後、どのようなキャリアを築きたいか?そのために必要な経験やスキルは何か?
- 提供できる価値: あなたの強みや経験は、どのように企業や社会に貢献できるか?
この自己分析を通じて、あなたが企業に対して提供できる独自の価値を見出していきます。
2. 目的を持った企業研究
企業研究の目的は、単に面接で聞かれそうな質問への回答を準備することではありません。大切なのは、自分のビジョンや価値観と合致し、自分の価値を最大限に発揮できるフィールド企業を見つけることです。
- 企業の理念とビジョン: 企業の掲げる理念やビジョンは、あなたの価値観と合致しているか?
- 事業内容と市場位置: 企業の主要事業や市場での立ポジションを理解し、あなたがどのように貢献できるか考える
- 企業文化: 企業の働き方や組織文化は、あなたの理想的な働き方と合っているか?
- 成長戦略: 企業の将来の方向性は、あなたのキャリアビジョンと整合しているか?
- 課題と機会: 企業が直面している課題や機会を理解し、あなたがどのように貢献できるか考える
この研究を通じて、単に「良い会社だから」ではなく、なぜその企業であなたが働く必要があるのか、その必然性を明確にします。
3. 求人職種への深い理解
特定の求人に応募する場合、その職種や役割について深く理解することが重要です。
- 職務内容の詳細理解: 求められる具体的な業務内容、責任範囲を把握する
- 必要スキルの分析: 求められるスキルや経験と、自分の持つスキルや経験のマッピングを行う
- 成功の定義: その役割で成功するために何が必要か、どのような成果が期待されているかを理解する
- キャリアパス: その職種が将来のキャリアにどうつながるか、長期的な視点で考える
- 価値提供の具体化: あなたの強みや経験が、どのようにこの職種で活かせるか、具体的に考える
この理解を通じて、面接ではあなたが何を提供できるか、そしてその役割を通じてどのように成長したいかを具体的に説明できるようになります。
4. 面接当日の実践的準備
面接当日に向けては、上記の準備を基に、実践的なトレーニングを行います。
- 自己紹介の練習: あなたの価値提案を簡潔に伝える自己紹介を準備し、練習する
- 想定質問への回答準備: 一般的な質問や、企業・職種特有の質問を想定し、あなたの価値を伝える回答を準備する
- エピソードの具体化: あなたの強みや経験を裏付ける具体的なエピソードを用意する
- 質問の準備: 企業や職種について、あなたが知りたい点を質問としてまとめる
- 非言語コミュニケーションの練習: 姿勢、アイコンタクト、声のトーンなど、話し方の練習を行う
面接は、あなたと企業がお互いを知り、将来のパートナーシップの可能性を探る貴重な機会です。準備を通じて得た自己理解と企業理解を基に、オープンで誠実なコミュニケーションを心がけることが、成功への鍵となります。
一方で、自己分析や企業研究、面接の練習など、自分の力だけで行おうとすると視野が限定されてしまい、なかなか見識が広がらなかったり、方向性に不安を感じてしまったりすることがあると思います。
そういった場合は、信頼できる友人やコミュニティの中で相談してみたり、転職エージェントなどのプロの知見を取り入れることがお薦めです。
4. 面接の振り返りとフォローアップ
面接が終わった後も、次のステップに向けてできることがあります。一つ一つの面接に対して振り返りとフォローアップを行うことで、自身のキャリア形成に活かすことができます。
面接後に意識したいこと
- お礼メールの送信: マナーとして絶対に送るべきというものでもありませんが、面接後にお礼のメールを送ると、企業に対して礼儀正しさや熱意を示すことが出来ます。面接の機会をいただいたことに対する感謝や、改めて自分の意欲を伝えます。
- 次のステップの確認: 面接の結果について、どのようなスケジュールで連絡が来るかを確認します。次の面接がある場合は、さらに深掘りした準備を行います。不明点があれば、人事担当者に適切なタイミングで問い合わせることも検討しましょう。
面接の振り返りと次回に向けた改善点
- 振り返り: 面接での自分のパフォーマンスを振り返り、良かった点と改善が必要な点を整理します。特に、質問に対してどのように答えたか、面接官の反応がどうだったかを振り返ることが重要です。
- 改善点の洗い出し: 振り返りをもとに、次回に向けた具体的な改善点をリストアップし、それに向けた練習や準備を行います。特に上手く伝わらなかったと感じる部分を強化することで、次回の面接でより良いパフォーマンスを発揮できるようにします。
- キャリアプランの再考: 面接を通じて得た新たな視点や情報をもとに、自身のキャリアプランを見直します。自身のパフォーマンスを見直すことも大事ですが、自分のやりたいことはその会社でできそうか、自分が求めている希望条件と相違はないかなど、転職先として適切かどうかを改めて見極めることも大切です。
5. まとめ
転職活動は、単なる就職先の変更ではなく、自身のキャリアを主体的に構築していく過程です。そして面接は、思い描いたキャリアを具体的に形成していく大きなチャレンジであると同時に、自己成長の機会でもあります。
この経験を通じて得られる学びや気づきを大切にし、より充実したキャリアへの第一歩としてください。