最近、会社の業績が思わしくない、うちの業界ってどうなのかな──そんな気持ちになったことはありませんか?数字の話題が多くなったり、コスト削減の空気が社内に漂っていたり‥会議のトーンもどこか重たく、「この先どうなるんだろう」と不安になったり。「もう転職しよう」とはっきり決めたわけでもない。ただ、「もう転職しよう」とはっきり決めたわけでもない。でも今の環境にこのまま身を置いていていいのか、自分でも答えが出せない──そんな気持ちを抱えている方も多いらっしゃるのではないでしょうか。

会社の業績悪化がきっかけで今後のキャリアを考える。そんな時大切なのは、「辞めるべき」「残るべき」といった二元論で考えるのではなく、“今の状況をどう捉え、自分はどう関わるのか?どういう機会にするのか?”という視点を持つことです。

会社の業績が悪化している現状は、キャリアにとって「ただのリスク」だけではなく、自分の強みや立ち位置、働く意味を見直すきっかけにもなりえます。だからこそ得られる経験、今だから築ける関係、そして、自分の選択で動けるという可能性もあるはずです。

本記事では、会社の業績悪化という不確かな状況のなかで、焦らず、立ち止まって、自分にとって最適な行動を選び取るためのヒントをお伝えします。

目次

1. まず、今の不安をどう整理するか

会社の業績が悪化している。そのこと自体は分かっているけれど、「このままでいいのかな」「転職した方がいいのかな」といった不安が、なんとなく心の中に居座っている──そんな感覚を抱えていませんか?

すぐに答えが出ないのは当然です。でも、この“不安の正体”が曖昧なままだと、焦って行動して後悔するリスクもあります。まずは、今自分が何に不安を感じているのか、簡単でいいので整理してみることが大切です。

1-1. 転職すべきかどうか、決めきれない理由

「なんとなく転職した方がいい気がする」けど、決断には踏み切れない。そんなときは、「会社の状況」と「自分の状況」を混ぜて考えていないかをチェックしてみてください。

たとえば、「会社の業績が悪い」=「自分もこのままでは危ない」と感じるのは自然なことですが、それだけで「今すぐ辞めるべき」とは限りません。逆に、業績が良い会社でも「この環境ではもう成長できない」と感じていれば、転職を考える価値はあります。

つまり、「会社がどうか」と「自分がどうしたいか」は別物。これが混ざっていると、判断がぶれやすくなります。

1-2. 「会社の問題」と「自分の問題」を分けてみる

そこでおすすめなのが、紙に書き出してみることです。頭の中で考えるだけでは、モヤモヤがいつまでもまとまりません。

以下のように分けて、思いつくことを箇条書きでOKです。

▸ 会社の問題(環境要因)

  • 売上や利益の落ち込み
  • 今後の事業展開が見えない
  • 組織の雰囲気が暗い、人が辞めている

▸ 自分の問題(個人要因)

  • 今の仕事に手ごたえを感じない
  • この先どんなキャリアを歩みたいのか分からない
  • 自分の強みやスキルに自信がない

実際に書き出してみると、「自分は“会社の状態”より、会社が不安定であることによって“将来のキャリアが見えないこと”に不安を感じているのかも」と、意外な発見があるかもしれません。

1-3. 不安の正体が分かれば、次の一手も見えてくる

不安を「会社」「自分」「将来」などに分けて整理すると、やみくもに転職サイトを開いたり、誰かの意見に振り回されたりすることが減ってきます。

たとえば、あなたの不安の正体が「先行き不安定な会社の中で、このままだとスキルが伸びないことが不安だ」と気づけた場合、もしかしたら、今の職場だからこそ得られる成長機会も見えてくるかもしれません。

不安をそのまま行動に変えるのではなく、いったん言葉にして立ち止まってみると、より自分に合った選択肢が見えてくる可能性があります。

2. 自分にとっての「リスク」と「チャンス」を見極める

業績悪化の状況で「とにかく辞めた方がいいのか」「このまま残る方が安全か」と悩むのは自然なことです。しかし、誰かが言う「あまり良くなさそう」という印象ではなく、あなた自身にとってのリスクとチャンスを冷静に分析することが大切です。同じ状況でも、立場や経験、家庭環境によって最適な選択は変わります。

2-1. 今の会社に"居続ける"場合のリスクとチャンス

会社の業績が思わしくない状況のなかで、「このまま今の職場に残る」という選択をしている方も多いと思います。ただし、それは「何も変わらない」という意味ではありません。むしろ、変化が避けられない状況だからこそ、残ることにも一定のリスクとチャンスがあるという前提で捉えることが大切です。

たとえば、組織全体に元気がなくなり、周囲の空気に引っ張られて自分自身のモチベーションが下がってしまう。業績が落ちていることで、新しいチャレンジの機会が減り、「このまま同じ業務を繰り返すだけかもしれない」と感じてしまう。こうした影響は、特に中堅層にとって見えにくく、じわじわとキャリアの選択肢を狭めてしまうことがあります。また、人員配置の大幅な変更により、これまでの業務内容や働き方が大きく変わる可能性もあります。ミッションの見直しや、想定外の異動などが発生することも視野に入れておくとよいでしょう。

一方で、「今、会社が大変なときだからこそ、自分がどんな役割を果たすか」が注目されやすいフェーズでもあります。求められる責任が大きくなる分、新たなポジションや経験を得られるチャンスが生まれることもあります。現場での業務改善や、部署の立て直しなどに積極的に関わることで、後から振り返ったときに「この経験が転機だった」と言えるような成長につながる可能性もあります。

「残る」という選択に、明確な戦略や意図があるかどうか。それによって、この状況を“停滞”にするか“成長のきっかけ”にできるかが大きく変わってきます。

2-2. 転職することのリスクとチャンス

一方で、今の会社から一歩外に出て、転職という選択肢を考える方もいると思います。

転職には、今の状況では得られない新しい経験や環境を手に入れられるという可能性があります。たとえば、業績の良い会社でより前向きな雰囲気のなか仕事ができたり、自分のスキルを活かせるフィールドで実力を発揮できたり。
働き方や待遇の改善につながることもありますし、「こんな働き方もあったのか」と価値観が広がる経験になることもあります。

ただし、当然リスクもあります。新しい職場にうまく馴染めなかったり、思っていた業務内容と実際の仕事にギャップを感じたりすることもあります。また、転職活動には一定のエネルギーや準備が必要で、「とりあえず」で動くと後悔する可能性も否定できません。転職を前向きに捉えるのは良いことですが、今の不安から逃れるためにあまり考えないまま焦って決断してしまうと、次の選択肢も狭めてしまう可能性があります。

「なぜ転職したいのか」「転職先でどんなことを実現したいのか」——その答えを言葉にできる状態になってから動くことをおすすめします。

2-3. 「自分にとって」のリスクとチャンスを整理する

ここまで読んで、「じゃあ結局、自分はどうすればいいんだろう」と感じている方もいるかもしれません。転職にも残留にもリスクとチャンスがある。だからこそ、大事なのは“自分にとって”どうかという視点です。

たとえば、同じ会社でも「業績が厳しい今だからこそチャレンジを増やしスキルを高めよう」と考える人もいれば、「このままでは自分の役割が曖昧になっていきそうだ」と不安になる人もいるでしょう。また、年齢やライフイベントの状況、スキルの棚卸し具合によって、見えてくる選択肢にも差が出ます。それぞれの立場やフェーズによって、「リスク」や「チャンス」の捉え方が変わってくるのは自然なことです。

大切なのは、「この状況に対して、自分はどう感じているのか?」を主語にして考えること。一般的な正解や他人の判断基準ではなく、自分の目線で納得のいく判断をするための整理を進めていきましょう。
職種・役割・年齢・ライフイベント・将来のビジョン——
あなたの置かれている状況や優先順位によって、リスクとチャンスの意味合いはまったく異なります。

おすすめなのは、自分の視点で「不安に感じていること」と「可能性を感じていること」を書き出してみることです。
他の誰かと比べるのではなく、自分がどうしたいかを整理する。その視点があってこそ、どんな決断をしたとしても納得感のある選択につながります。

3. 決めきれないなら、"関わり方"という第3の選択肢を持つ

多くの人が「残る or 辞める」の二択で悩んでしまい、身動きが取れなくなってしまいます。しかし、実際には会社との関わり方の濃度を調整するという中間のアプローチが存在します。完全な転職や完全な残留ではなく、今の環境でできることを最大化しながら、自分の主体性を保つ方法を考えてみましょう。

3-1. 「残る」ことに意味を持たせるのは、自分の姿勢次第

たとえば、「会議のムードが重い」「上からの指示ばかりでやりがいを感じない」——そうした環境の中でも、自分の影響が及ぶ半径の中で何かを変えることはできます。

  • 新しく入ってきた後輩に声をかけ、少しずつ不安を和らげていく
  • 日々の仕事の中で感じた業務上の課題を、簡単なメモにまとめて上司に共有してみる
  • 他部署とのやり取りを少し工夫して、連携のしやすさを改善してみる

こうしたアクションは、小さなものであっても“関わり直す姿勢”として社内では必ず見られています。「何も変わらない日々」ではなく、「自分の意志で何かを働きかけた日々」。それは半年後、一年後に、あなたの評価や成長感に確実に影響を与えます。

3-2. 今の仕事に、もう一度「問い」を立ててみる

「もう限界かも」と思ったときこそ、一度立ち止まって自分に問いを立ててみてください。

  • 「今の自分に与えられている役割って、どう見えているだろうか?」
  • 「会社が変わっていくなかで、身につけられることはないだろうか?」
  • 「この組織で、他に自分が活かせるポジションや機会はないだろうか?」

たとえば、今は事業部の縮小フェーズだったとしても、新しい事業の立ち上げ準備や社内横断プロジェクトなど、これまでなかったチャンスが生まれていることもあります。その変化に気づけるかどうかは、普段から課題意識を持ち、目の前で起こっていることに対して、問いを持って関わっているかどうかで決まる部分が大きいのです。

3-3. 「どう関わったか」は、必ず後のキャリアにつながる

「なんとなく残った」経験は、キャリアとして残りません。けれど、「厳しい状況の中で自分なりに行動した」「一つでも課題を解決しようとした」という経験は、たとえ小さくても履歴書に書ける価値のある実績になります。

たとえば、こんな経験を語れるとどうでしょう?

  • 「売上が大幅に落ち込んだ時期に、業務フローの改善を提案し、手戻りを減らしました」
  • 「不安を感じている若手の声を拾い、チーム全体で共有する仕組みを立ち上げました」

それは「厳しい時期でも前を向いていた人」という証拠になります。面接で伝えるエピソードとしても、非常に説得力のある材料になります。

転職するにせよ、今の職場に残るにせよ、「このとき、自分はどう関わっていたか」は、キャリアの“芯”をつくる財産です。

4. 今すぐできる、3つの具体的アクション

「そろそろ何か動かなきゃ」と思っても、やることがぼんやりしていると、不安だけが積もっていきます。ここでは、考えるだけで終わらせず、すぐに手を動かせる3つのアクションをご紹介します。どれも、1日10〜30分でも進められる内容です。小さな一歩が、未来の選択肢を増やしてくれます。

4-1. キャリアの棚卸し:30分だけ、自分の仕事を“見える化”する

まずは、過去半年〜1年の業務をざっと書き出してみましょう。形式や体裁はいりません。思い出せる範囲で、下記の内容を書き出してみてください

  • どんなタスク・プロジェクトに関わったか
  • 工夫した点や、周囲に感謝されたこと
  • 自分が「ちょっと誇らしかったな」と思えた瞬間

ここで重要なのは「成果があったかどうか」ではなく、自分の中で手応えや意味を感じた場面にフォーカスすることです。
自己肯定感が落ちているときこそ、「自分はちゃんと仕事してきた」と認識するだけでも前向きなエネルギーが湧いてきます。このメモは、後で職務経歴書にも使えますし、上司との面談にも活かせます。

※参考:【完全ガイド】キャリアの棚卸し やり方・活かし方を徹底解説!―とこキャリ(tokon.co.jp)

4-2. 外の声を取り入れる:「モヤモヤ相談先」を1人持っておく

迷いが深くなってしまうのは、「頭の中だけでグルグルしている」から。思考を整理するには、他者の視点を通すことがいちばん早いです。

相談相手は、転職エージェントでなくてもかまいません。たとえば:

  • 業界の別会社で働く友人
  • 前職の上司や信頼できる先輩
  • キャリアに前向きな同僚や副業仲間
  • キャリア相談サービスやキャリアコーチング

「この人に話すと、自分の考えが整理される」——そんな相手を1人見つけて、15分だけでも話してみる。それだけで、視界がクリアになることがあります。

4-3. 今いる場所で、1つ“自分起点の動き”を作ってみる

「何も変えられない」と思ってしまうと、動く気力がなくなってしまいます。でも、今いる場所でも“自分発”の動きは意外とつくれます。

たとえば:

  • 日々の業務で気づいた改善点を上司に共有してみる
  • 新人に業務のコツをまとめて渡してみる
  • 会議の空気が重いなら、自分から前向きな発言をしてみる
  • 担当外のプロジェクトにサポートとして関わってみる

これらはすべて、「主体的に仕事をしている人」としての実績になります。転職時の自己PRにもつながりますし、社内での信頼や役割の広がりにもつながっていきます。

5. 転職を視野に入れたとき、最初にやるべきこと

ここまで状況を整理し、自分なりの判断軸を持ったうえで「やっぱり転職も視野に入れて動きたい」と思えたなら、それは大きな一歩です。ただ、焦って動き出してしまうと、条件のミスマッチや準備不足で後悔する可能性もあります。

ここでは、転職という選択を“正解にしていく”ために、まず取り組んでほしい3つのステップをご紹介します。

5-1. 自分の「転職軸」を明文化する

まずは、「なぜ転職したいのか」「何を変えたいのか」を言語化してみましょう。特に、今の会社に不満がある場合、「あれもこれも変えたい」と条件を盛り込みすぎてしまいがちです。そこで大切なのが、「理想」と「妥協点」を切り分けておくことです。

たとえば、以下のようにリスト化してみましょう。

転職で重視すること絶対に譲れないできれば叶えたい妥協できる
年収現状維持100万円アップ若干ダウンでもOK
働き方リモート可フレックス制度あり通勤1時間以内ならOK
成長環境新規事業に関われるIT業界が良い業界未経験も視野に

このように「優先順位」をつけておくと、求人選びや選考の意思決定で迷いが少なくなり、“自分の基準”で判断できるようになります。また、現実的にすべてを満たす求人は多くないからこそ、「どこなら譲れるか」を最初に考えておくことが、結果的に納得感の高い転職につながります。

※参考:転職の「軸」って何??仕事探しに必要な4つの視点をわかりやすく解説!―とこキャリ(tokon.co.jp)

5-2. 職務経歴書を“ストーリー”で構成する

職務経歴書は、単なる実績のカタログではありません。「どんな環境で、どんな工夫をし、何を実現したのか」を、あなた自身の言葉で伝える“ストーリー”として構成することが大切です。

たとえば、業績が悪化していた時期でも、

  • チームの生産性を高める工夫をした
  • 社内の混乱期に後輩を支えた
  • 売上が厳しい中でも顧客との信頼を守った

といったエピソードは、数値以上に“あなたという人がどんな姿勢で働いてきたか”を伝える材料になります。

特に中途採用では、スキルや経験だけでなく、「どんな価値観で、どんなふうに組織に関わる人なのか」が重視されます。それらを余さず伝えるためにも、自分の社会人としての人となりを100%伝えるつもりで書いてみてください。

また、内容がある程度まとまったら、キャリアアドバイザーや信頼できる先輩に見てもらうのもおすすめです。自分では気づけなかった強みに気づけることもあります。

※参考:「職務経歴書が書けない!」基本的な作り方と、書けない原因に合わせた対処法―とこキャリ(tokon.co.jp)

5-3. 情報収集と相談ルートを複数持つ

転職活動は、勢いで走り出すのではなく、「情報を制する者が転職を制す」と言っても過言ではありません。特に年齢や経験を重ねているほど、応募先の企業文化、求める役割、自分の市場価値とのギャップなど、慎重に見極めるべき変数が多くなります。

まずは求人情報に目を通し、自分の職種やポジションが市場でどう評価されているかを客観的に把握しましょう。転職サイト、口コミ、企業HPなど複数の情報源を使うことで、偏りのない判断ができるようになります。

そしてもうひとつ大事なのが、「他者との対話」=壁打ちです。

  • 信頼できる先輩や元同僚
  • 転職経験者
  • キャリアカウンセラーやエージェント

こうした相手に、自分の迷いや希望を“言葉にして伝える”ことで、頭の中のもやもやが整理されていきます。一人で考えていると「転職する or しない」の二択に陥りがちですが、第三者の視点を通すことで、「どんな条件なら転職すべきか」「今はまだ残るべきか」といったグラデーションのある選択肢が見えてくることもあります。

※参考:転職エージェントは「まず相談だけ」でもOK!どんな相談ができるか解説―とこキャリ(tokon.co.jp)

6. まとめ

会社の業績が厳しいという事実は、決して小さな不安ではありません。でも、それにどう向き合うか、どんな選択をするかは、あなた自身が決めることができます。「辞める」「残る」だけでなく、「どう関わるか」という視点を持つことで、今の環境も、これからのキャリアも大きく変わります。
焦らず、立ち止まって、考えて、動いていく。その一歩一歩が、あなた自身の納得のいくキャリアを形づくっていくはずです。不安なときこそ、自分の意思で進む道を選べるように──そんな応援を、この記事ができていたらうれしいです。