コロナ禍の影響で拡がった「テレワーク」という働き方。
「自分の好きな環境で仕事ができる。」
「通勤時間が削減されるので、プライベートとの両立が取りやすい」
そんなメリットを求め、テレワークを実施している企業への転職を希望する方も多いのではないでしょうか?
しかし、コロナ禍による行動制限が終息を迎える中、企業は今後、テレワークを継続していく意向はあるのでしょうか?
今回は、テレワークを巡る企業の実情、また、その働き方によるメリット、デメリットをお伝えし、テレワークを目的とした転職活動の参考にしていただければと思います。
減少傾向にあるテレワーク実施率
東京都が実施する都内企業(従業員数30人以上)を対象としたテレワーク実施状況についての調査によると、令和5年4月段階でのテレワーク実施率は46.7%。
実施率の推移を見ると、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されていた令和3年の4月~9月や、令和4年1月~3月は60%台を超えていましたが、以降は50%台を推移。
実施率は徐々に下がっていき、今年3月にマスク着用が個人の判断に委ねられるようになるなど、コロナの収束が見えてくると実施率は50%を下回りました。
海外企業ではテスラ、Google、Amazonなどが出社回帰を進め、国内でも楽天グループ、ホンダ、GMOインターネットグループなどがテレワークの廃止や、出社重視の働き方への転換を進めているなどの報道も見られます。
アフター・コロナに突入しつつある中、テレワークの見直しが加速しているようです。
テレワークを続ける企業、見直す企業
テレワークを続ける企業と見直す企業。
それぞれ、どのようなメリット、デメリットを感じ判断をしているのか?
総務省が行った「テレワークセキュリティに係る実態調査(令和3年4月)」を見ると、テレワーク導入のメリット、デメリットにどのようなものがあるか、見ることができます。
テレワークのメリット
「テレワークの導入により働き方で大きく変革した点」についてアンケートを見ると、「残業時間が減少した」「タイムスケジュールや業務進捗について、従業員の自己管理意識が向上した」「仕事とプライベートの調和により、社員のワーク・ライフ・バランスが向上した」「社内のペーパーレス化や承認フローの電子化が進んだ」といったメリットを感じる声が大きく上がりました。
つまり、テレワーク環境の整備により、これまでの業務フローの見直しや、アナログ作業のデジタル化が進み、業務効率化が進んだことが大きなメリットの一つと言えます。
また、通勤という概念がなくなることで、社員のワーク・ライフ・バランスの向上が進んだ他、柔軟な働き方が実現できるようになり、居住地、ライフステージ、障がいの有無など、様々な属性の異なる社員が参加できる環境が形成されました。このことが、雇用の安定化や人材採用の可能性の拡大など、企業の雇用面でのメリットに繋がっています。
テレワークのデメリット
一方、コロナ禍以降のテレワーク継続を望まない企業の声として上がったのは、「社内のコミュニケーションに支障があるから」「業務の進行管理が難しいから」「情報漏えいなどのセキュリティが心配だから」「顧客など外部への対応に支障があるから」「社員の評価が難しいから」といった理由でした。
オフィスでの管理下を離れると、会社としては社員のコンディションを把握しづらくなるという課題が発生します。
たとえば、情報共有を1つするにしても、オフィス勤務では立ち話で済んでいたものが、テレワークではテキストに落とし込んだり、電話をしたりといった負担が生じます。
コミュニケーションの負担が大きくなる中、報・連・相が上手く回らなくなったり、社員間の連携がうまく取れなくなったりといった課題を、テレワークの中で感じる企業も多いようです。
実体験としての出社とテレワーク
ここまでは、世の中の調査データなどをもとに、テレワークを巡る企業の動向をお伝えしました。
ここから、本記事を書かせていただいている私の意見をお伝えさせていただきます。
私は現在、週2回程度の出社とテレワークを組み合わせた、ハイブリッドワークで勤務をしています。
出社勤務、テレワークそれぞれを経験する立場ということで、双方のメリット・デメリットをお伝えできればと思います。
もちろん、あくまで主観的な話にではありますが、1つの生の声として少しでも参考になれば幸いです。
対面コミュニケーションだからこそ生まれる相乗効果
弊社では、テレワーク時は基本的に社内SNSを通じた「テキスト(文章)」でのコミュニケーションがメインとなります。
業務連絡や仕事の進捗報告、特出すべきトピックスなど。
基本的にはSNS上に投稿したり、チャット機能を使って個別メッセージを送りながらやり取りをします。
ただ、テキストだけでは伝えづらいニュアンスを伝えたい時や、緊急の連絡の際には電話を使います。
また、顔を見ながらコミュニケーションをした方が効果的な会議や、業務レクチャーなどにおいては、Zoomを使ったオンラインミーティングを実施します。
テレワーク時は基本的に何かのツールを使わないとコミュニケーションが取れないため、目的のないコミュニケーションはほとんどありません。
それゆえ、無駄なやり取りがなく業務に集中することができます。
では一方でデメリットは‥と考えると、テレワーク下ではひとり黙々と仕事をすることが多く、私自身は新たな気付きを得にくいように感じています。
またこうした状況では、特に若手社員など、困難に直面した際に少し心細く不安に感じる人もいるのではないでしょうか。
トラブルで慌ててしまっているとき、テキストでその状況を伝えることはよりハードルが上がりますし、そもそも誰に助けを求めればいいのかに悩んでしまったり、また上司や先輩が電話がつながらないなどでさらに不安が増してしまう、などということもあるかもしれません。
出社の際はどうしても、対面でのコミュニケーションの割合が多くなります。
その中では自然と雑談を行うことも多いです。
実は、この雑談が仕事においてプラスに作用することが多々あります。
たとえば、営業メンバーが取引先との商談を終え、上司とその内容をオフィス内で会話している場面があった時。
最初は自分の仕事をしつつ聞き耳を立てているだけでしたが、話が進む中で、自分が役に立てそうなトピックスになったら、会話に参加し、情報共有。
その会話には他のメンバーも参加し、最初は営業、上司の2者間での情報交換だったものが、気付けば部署全員でのディスカッションの場に発展する。
こんな場面がよくあり、テレワークでは参加できなかった雑談に参加することで、仕入れることができなかった情報を仕入れたり、自分の枠を超えて新しい仕事に参加する機会を得たりといったきっかけに繋がります。
また、対面だと、テキスト情報ではなかなか伝わらない「この仕事を成し遂げたい」「お客様の力になりたい」といった他メンバーの仕事に対する温度感を受け取ることも多く、その熱量が自分の仕事のモチベーションに繋がることも。
テレワークでも仕事を行うことができますが、周囲の刺激を受けて自分にプラスの働きかけをするという意味では、出社による対面コミュニケーションの増加がもたらす相乗効果は代えがたいものがあります。
テレワークだからこそ乗り越えられたライフイベント
一方で、テレワークという働き方にもだいぶ助けられました。
私的な話ですが、コロナ禍以降、私はプライベートで様々なライフイベントを迎えており、自分が家族を支えなければならない場面も多々ありました。
もちろん常に家庭優先というわけにもいきませんが、テレワークという選択肢がなければ、家族に負担をかけることも多くなり、家庭の在り方も今とは大きく変わっていたのではないかと思います。
(もしくは家庭を優先して「転職」という選択肢も検討していたかもしれません)
テレワーク、出社、それぞれに良さも課題もある
インターネットを見ていると、「テレワークが出来ないなんて時代遅れ」「やっぱり出社して直接会わないと伝わらない」など、極端な議論が多いように感じています。
しかし、安易に「~のほうが良い」と決めつけてしまうのはもったいない。
どちらが正解というよりも、それぞれの特性を正しく理解し、「活かす」ことが大切ではないでしょうか。
テレワークであれば、ひとりひとりが自立心を持ち、積極的なコミュニケーションを意識的に行っていく姿勢が必要です。
また、出社であれば、業務の効率化を進めることや、出社だからこその意味や意義を考えることも大切です。
ぜひ、仕事探しの参考にしてください。