前回に続き、「面接対策」をテーマに、 弊社・株式会社トーコンで採用担当を長く務める前原加奈さんのインタビューをお届けします。
前回:【人事担当者に聞く"面接対策"-前編】マナーに囚われ過ぎず、お互いが尊重し合い、集中できる面接を。
前編では、面接において気を付けるべきマナーについてお話をお伺いしましたが、今回は面接における事前準備や、質疑応答、「こんな時、どうする?」といった、面接の具体的な内容について取り上げます。
前回に続き、「面接対策」をテーマに、 弊社・株式会社トーコンで採用担当を長く務める前原加奈さんのインタビューをお届けします。
前回:【人事担当者に聞く"面接対策"-前編】マナーに囚われ過ぎず、お互いが尊重し合い、集中できる面接を。
前編では、面接において気を付けるべきマナーについてお話をお伺いしましたが、今回は面接における事前準備や、質疑応答、「こんな時、どうする?」といった、面接の具体的な内容について取り上げます。
斉藤 祐太 Yuta Saito
前原 加奈 Kana Maehara
面接における事前準備について、前原さんはどんなことが大事だと思いますか?
面接前に、企業を理解しようとすることは大事だと思います。
ただ求人内容を見るだけではなく、ホームページなどに目を通し、その会社のビジネス、事業上の強み、そこに紐づくカルチャーなどについて考えてみてほしいのです。
多方面から想像力を働かせ、自分が働く姿をイメージする。
もちろんわからないこともたくさんあると思うのですが、わからないなりに仮説を立てておくことが大切です。
自分の人生を預ける場所を選ぶわけですから、「入社してみないとわからない」と諦めるのはもったいないと思うんです。
もちろん、面接官の立場としては、応募者が自分の会社の何に興味があるか、どのくらい理解してくれているのかは気になります。
ですが、企業研究は決して「面接で好印象を残すため」に行うものではないと思うんです。
自分自身が後悔しないように、ギャップを減らすために行っていただきたいと思います。
最近では企業側も求職者との接点を大事にするために、面接の敷居を下げて「カジュアル面談」という形で、お互いを知る場として面接を組むこともあると思います。
そういった場合でも、やはり事前の企業理解は大事ですか?
お互いに忙しい中で時間を作ってその場を設けていることを考えると、時間をより有効に使うためにも、事前の理解はあった方がいいかと思います。
もちろん、求職者側もそうですし、企業側も大切にすべき姿勢です。
それに、準備なく丸腰でその場に臨むより、事前の準備があった方がその時間がより深くなりますよね。
たとえば、その場で企業について100の説明があったとしたら、事前の知識がないと半分ぐらいしか理解出来ないかもしれないけど、知識があれば100の説明で120の理解に膨らむかもしれない。
たしかに、土台となる知識があれば、理解も早いかもしれないけど、それがないと、その場で土台作りから始めないといけないですね。
そういった事前準備の差は質問にも表れると思います。
相手に対する知識がないと、その場で思いついた質問しかできないかもしれません。
ですが、知識があれば、理解を深めた上でより重要な質問ができる。
質疑応答の時間を形骸化させてしまうのは、機会を自ら手放すようなものだと思います。
質問についてのお話がありましたが、その場での思い付きのような質問と、本当に会社を理解しようとする質問って違いがありますか?
「違う」と私は思います。
その会社のことや仕事のことをしっかり理解しないまま質疑応答に臨もうとすると、そもそも「聞きたいことが思いつかない」「何を聞いていいかわからない」となってしまうのではないでしょうか。だから、しょうがなく、一般的な質問例のようなものを参考にせざるを得ない。
また自分が何のために転職するのかも大切にしてほしいです。
営業を希望して面接をするという方がいたとします。その方は前職では営業がやりたかった・沢山の人に自分から会いに行って自分が関わって何か創り出すような仕事がしたいと思っていた。なのに、配属先が違う部署だった。‥例えばそういう方の質疑応答であれば、
①営業先はどのようなところが多いか、何か特徴はあるか
②それは競合と比較して何か違いはあるのか
③営業活動において分業されている箇所はあるか
④HPを見ると●●と記載があるが、具体的にはそれはどのようなことなのか etc 質問できることは無尽に想像できるわけです。
自分が入社後、どんな仕事をしてどのような気持ちで日々を暮らしていくのか、見える景色の「解像度」を上げることが重要だと思います。
ぜひ、求職者の方々には質疑応答の機会を大切にしていただきたいです。
ただ、僕も「何か質問ありますか?」というシーン、苦手なんですよね。
その場で上手く言葉が出てこなかったり、これ聞いていいのかなっていう遠慮が出てしまったり…。
面接において目指すべきゴールは、自分が働くイメージを持てることだと思います。
事前の企業理解だけではわからない部分を質問で聞いて、わからない部分を埋めていけばいいのだと思います。
ちなみに、質疑応答において聞かれたら困る質問ってありますか?
基本的にはありません。
ただ、何を知りたいのかがわからない質問は返答に困ることがあります。
たとえば、「前原さんの将来の夢は何ですか?」と若い方から聞かれることがたまにあります。
「ちなみにその質問でどんなことがわかると嬉しいですか?」と聞くと、「自分の入社後のキャリアの参考になれば嬉しい」とおっしゃる。
でも、その方は営業職希望だったりするんですね。
残念ながら、私はトーコンで営業はやっていませんし、20歳以上年齢も違うと、きっとその方が私の年齢になっているときは時代そのものが変わってしまっていると思うんです。
それならば、近しい年齢の営業の先輩たちが今何を目指しているのかとか、どんなことにチャレンジをしているのかなど聞いた方が参考になるのではないかと思います。
上手く質問しづらいなと思うなら、「●●について知りたいので具体的な例などあれば教えてもらえませんか」とストレートに聞いてもかまいません。
限られた時間の中で会社のことを知ることができる貴重な機会だからこそ、質疑応答の時間は大事にしてほしいですし、有意義な時間にするための準備はしっかり行ってほしいですね。
面接官として「この面接はよかったな」と手ごたえを感じるのはどんな時ですか?
自社の方向性・価値観と、その方の経験や考え方がリンクすると、「この人はうちに入ったら幸せになれる」と自信を持って言える。
自然と入社後のビジョンが湧き上がります。
その瞬間は、お会いできて良かったと心から嬉しく感じます。
また、「面接を通じて自覚していなかった自分の内面に気付いた、自分らしさを再認識できた」などと言っていただけることがあります。
面接官としては、いただいた時間に対して価値を提供できたという手ごたえに繋がります。
そういった声を、求職者から聞く機会も多いですか?
私が面接官ではなかったのですが、ある社員から、今まで他社の面接ではむしろ隠していた自分のコンプレックスを、トーコンの面接では自然と話すことができて、且つ面接官から「それもあなたらしさの1つ」と認めてもらえた。
それがきっかけで「この会社だったらありのままの自分で仕事ができる」と入社を決意した、という話を聞きました。
そういう面接は、私にとって1つの理想です。
納得いくまで自己開示をして、ありのままの自分が出せる価値を評価した上で合格が出るというのは、求職者にとっても会社にとっても理想です。
そのために、自然と相手の内面を引き出していくことは、面接官としての務めだと思います。
たしかに、自分を出し切ったといえる面接であれば、結果はどうあれ、後悔のない面接になると思います。
一方で、たとえばその場が盛り上がらず委縮してしまったり、自分が話したい方向に会話を持って行けなかったりと、上手く自分を発揮できないこともありますよね。
そういう時、どのようにリカバーすればいいと思いますか?
基本的に面接はリベンジが利かないものだと思います。
まずはそのことを念頭に置いて面接に臨んでいただき、「自分を発揮できていない」「後悔が残りそう」と感じたのであれば、その場で対策をとるべきです。
もし私が求職者の立場で、面接の中で上手くいっていないのを感じたら、「今日は少し緊張していて、普段通り喋れていないかもしれません」といったように自分の状態を言葉にして伝えます。
そうすると、もちろん全員ではないですが、面接官によってはその場を仕切り直してくれる方もいるはずです。
私が面接官の場合、求職者の方があまり自分らしさを出せていないのではと感じたら、改めてアイスブレイクを入れたり、話すスピードを相手に合わせてみたりと、こちらもチューニングをするようにしています。
必ず持ち直せるとは限りませんが、自分の状態を伝えるということは、一つの方法として備えておいてもいいかと。
そのような方法を一つでも知っていると、面接の時のお守りになりそうですね。
他にも、緊張で言葉が飛んでしまった時や、オンライン面接における通信の不具合が発生した時なども、
「緊張で今話そうと思っていたことが飛んでしまいました、言い直させてください」
「通信環境のせいか、先ほどの質問が聞き取れなかったのでもう一回よろしいですか?」
など、自分の状況を伝えることが出来れば、面接官としても、何も説明がないよりは納得感があるのでは。
その状態のまま無理に続けようとするよりも、お互いに建設的な歩み寄りができると思います。
緊張やその場の空気でなかなか言い出しづらいこともあると思いますが、たしかに、その場をより建設的なものにするためには、上手く行かないこともありのままに言葉に伝えることが大切ですね。
あと、面接におけるリカバー方法でよく耳にするのが、面接終了時に「これだけ最後に伝えさせてほしい」とお願いする方法です。
これは面接官としてはどう受け止めますか?
まさに面接を終えようとしたときに、「最後にこれだけ伝えさせてください」など、おっしゃる方いらっしゃいますね。
後悔がないようにこれだけは最後伝えたい、というのは自然なアプローチだと思います。
面接官としては、それを面接の中で引き出せず、申し訳なかったとも感じます。
また、自分が話したことが自分の意図とは違う伝わり方をしているかも、と軌道修正したくなったり、そういったことも起こり得ると思います。
その場合もモヤモヤを残すより確認したほうがいいのではないでしょうか。
遠慮をして後悔を残してしまうのはもったいないです。
ただ、面接が終わった後「伝えきれなかったので」「うまく話せなかったので」とメールで送ってこられる方がいらっしゃいます。
正直、私はあまりお勧めしません。
採用のジャッジはスピーディに進められており、面接直後に合否の判定を出すことも少なくありません。
そういった状況の中、後出しの情報を考慮し、遡って選考し直すことは難しいと思います。
面接はお互いにとって大事な場です。
お互いにとってその決断が、大きな転機になり得ます。
そういった場を、綺麗に収めようとするのではなく、不格好でも勇気を出して、ちゃんとお互いを理解し合う場にする姿勢はとても大事だと思います。
最後に、これから面接を受ける方にメッセージをお願いします。
履歴書や職務経歴書を見れば、その方の経験や資格の有無などわかるかもしれませんが、それでもなぜ面接というアナログな手法をとるかというと、対話を通じてお互いが理解を深めることに価値があるからですよね。
30分や1時間という面接の場で人生の全てを伝えきるのは難しいですが、履歴書や職務経歴書の行間にあるような、一つひとつの経験の裏にある声や想いなど、面接を通じて対話をするからこそ伝わるものだと思います。
そういったアナログだからこそ伝わる情報を引き出すのは面接官の仕事ですが、同時に、求職者にはアナログだからこそ伝わる自分の魅力を、しっかり伝えきることに労力を惜しまないでほしいです。
これから面接を受ける方には、そういったアナログならではの価値を踏まえた上で、面接という場に真剣に向き合ってほしいと思います。
同時にこれは自分にも常に言い聞かせています。
お互いに貴重な時間を割き、大事な意思決定を行うためにその場にいる。
私たち面接官も、そういった価値を忘れずに面接に臨むべきですね。
今回は、面接前の事前準備や、本番での質疑応答についてのお話でした。
面接というと、相手に好印象を持たせること、失礼ないように振る舞うことに意識が向いてしまう方も多いかもしれませんが、本来の目的はお互いがお互いを見極めること。
自分の人生を預ける場所としてふさわしいか見極めることや、自分らしさをもれなく伝えちゃんと評価してもらうことが大事です。
本来の目的を達成するために大事なのは、企業のことを積極的に知ることと、自分らしさを伝えるための表現を磨くこと。
取り繕ってその場を綺麗に収めるのではなく、「相手を知る」「自分を伝える」という2つに全力を注ぐべきだと、前原さんとの会話を通じて強く感じました。
これから面接を受ける方々の、悔いのない転職活動の実現をこれからも応援していきたいと思います。
トーコンでは、転職やキャリアに悩む方のご相談を承っております。今まさに転職活動中の方はもちろん、これから転職活動を始める方、転職しようかどうか悩んでいる方、将来的な転職を考えている方のご相談も歓迎です。